名盤紹介その3(イギリス編)

 その1(ヨーロッパ編)へ   その2(ヨーロッパ以外編)へ 

 今まで聴いてきたプログレッシブ・ロック作品の中から これぞ名盤!と思った作品を、少しずつ紹介していきたいと思います。
 あえて、メジャーどころは外してあります!(中級者向き?)
 「こんな駄作が入ってるのに、何故あの名作が入ってないんだ?」 など、苦情、ご意見等あるかと思いますが、 あくまで個人的な感想ですので、大目に見てやって下さい!
原則として1アーティストに対し代表作1枚に絞って紹介していきます。
まだ作成途中ですが、とりあえず掲載します。



 イギリス

・AFFINITY/SAME(70)

名女性ボーカリスト、リンダ・ホイルを擁する ハモンド・オルガン主体のバンド、アフィニティ唯一の作品。
ジャズ、ブルースをベースにした、オルガンロックの王道的作品であり、 音楽的傾向としてはJULIE DRISCOLE, BRIAN AUGER & TRINITY とほぼ同じといって良いでしょう (バンド名まで似てる!、ニティつながり!(^^;))。
ハイライトはアルバムラストを飾るB3。 攻撃的なオルガンがたまらない... オルガンロックファンなら感涙ものである。
ヴァーティゴレーベルというところもポイントが高く、 キーフのジャケットもとても美しい。
キーフの作品でもBEST3にあがるような美しいジャケットではないだろうか? (内容はともかくジャケットではNIRVANAのLOCAL ANAESTHETICが1番?)


・SIGNS OF CHANGE/AFTER THE FIRE(78)

イギリスの4人組バンドがデビュー盤として自主制作で発表したキーボード・シンフォ。
シンセとオルガンをメインにとことん弾きまくる ピーター・バンクス(初期イエスのメンバーとは別人)のプレイは まるでキース・エマーソンを庶民的(笑)にしたような感じで魅力十分です。
せわしなく変わり続ける展開を支えるリズム隊も小気味良いです。 唯一ギターとボーカルが弱いことだけが欠点といえるでしょう。 (ギターの存在感の無さはまるで初期キャラバン(パイ・ヘイスティング) ...カラフルなキーボードの影に隠れてしまうところまで似てる!)
ELPっぽさとクレシダっぽさを併せ持ったようなヘンテコな サウンドですが、伝統的なイギリスのにおいがプンプンと漂っています。
自主制作によるチープでこじんまりとした未完成な音作りが、 逆に可愛らしく微笑ましい印象を与え、 この作品に特別な輝きを加えているように思います。


・WATERS OF CHANGE/BEGGARS OPERA(71)

ヴァーティゴレーベルの中では比較的メジャーなバンドである ベガーズオペラの2ndであり最高傑作。
オルガン、ピアノ、メロトロンを主体とし 全編を通じてクラシカルでマイナーな雰囲気を持ちながらも ベガーズオペラ節といえるような、 どことなく親しみやすく覚えやすい 独自のメロディセンスを確立しているバンドである。
クラシカルな演奏が印象に残るためか、 あまり語られることが少ないが、 個人的には歌心のあるボーカルがとても気に入っている。
ベガーズオペラの全てが凝縮されているといっても過言ではない、 圧倒的なクラシカルアレンジで聴かせる大名曲 MACARTHUR PARK(スタンダードナンバーであり、多くのカバーが存在、 中でもドナ・サマーのバージョンが有名(1978年、ビルボード1位)、 あまりにも違いすぎるので聴き比べると面白い!)を含む 3rdのPATHFINDERも必聴でしょう。
ナイスやエクセプションのようなスタイル (クラシックの名曲をアレンジしたオルガンロック)が好きなら クラシックの名フレーズが次々に飛び出す1stがお薦めです。


・ONE OF A KIND/BRUFORD(79)

イエス、キング・クリムゾン、UK...数々のスーパーバンドを渡り歩いてきた プログレ史上最高のドラマー、ビル・ブラフォードが結成したバンドの1stであり、 その後のジャズ・ロック界に多大なる影響を与えた名盤。
アラン・ホールズワース、ディヴ・スチュワート、ジェフ・バーリン というブラフォードと遜色のないテクニシャンが一致団結して 作り上げた力作で、全てが名曲、名演です。 音質も素晴らしいので、今聴いても全く古さを感じません。
音的にはUKの1stのインスト路線をよりテクニカルかつ ジャズ寄りに発展させた感じです。 半分はUKのメンバーなので当然といえば当然でしょう!
内容の素晴らしさは、 現在までに多くの亜流バンドが生まれてきたことからもわかります... が、当然この作品を超えるものはまだ出ていません!
本作の前に、ソロ名義で出したアルバムも素晴らしいものでしたが、 (こちらは若干カンタベリー色あり)本作の方が洗練されています。
一聴しただけですぐにブラフォードであるとわかる 独特のスネア音やタム回し(左右にパンする!)は、 独自のスタイルとして本作で完全に確立されたといっても良いでしょう。
演奏も最高ですが、曲も最高なのがポイントです。 ブラフォードがプレーヤーとして超一流であるのは誰もが認めることだと思いますが、 相当高度な作曲能力を持ち合わせていたことが本作により証明されている思います。


・VOICE/CAPABILITY BROWN(73)

唇のジャケットとタイトルが物語っているように 人間の声の素晴らしさを最大限に伝える大名盤。
その昔「GOLD WAX」という雑誌の名盤紹介コーナーに投稿し 掲載されたときの内容を抜粋・変更し掲載します。 (今までに2度掲載されました、もう1枚はVOLUME TWO/MANFRED MANN CHAPTER THREE)
アルバムタイトルどおり、人間の「声」という楽器が、他のどの楽器よりも表現力豊かで、 奥が深く、素晴らしいものだということを教えてくれる名盤である。
このアルバムを作った、キャパビリティ・ブラウンというバンドは、 6人のメンバーにより結成されているのだが、6人全員がヴォーカルをとる ことができ、3人がギターを弾くことができるという鬼のようなバンドである(GGみたい)。
また、このアルバムでは、ギターやエレピなどの普通の楽器の他にフルート、 リコーダー、ヴァイブに始まり、リュート、バラライカなど、通常ロックでは、 聴くことのできないような楽器も入っており、曲中で効果的に使われている。
構成も良く練られており、ギター一つとっても、アコースティック、エレキを 上手に使い分け、3人のギターのコンビネーションも抜群である。 特にワウワウが多く使われていて、曲にうねりを与えている。
また、他のアーティストの作品を取り上げ、アレンジして聴かせるのも得意であり、 A面の小品集において、4曲中、2曲は他のアーティストのもので、 1曲はスティーリーダン、もう1曲は、アフィニティも取り上げたことのある曲である。
このA面の小品集ももちろん良いのだが、B面すべてをつかった20分近い大曲には 圧倒されっぱなしであり、20分があっという間に感じてしまう程の素晴らしい出来である。 あまりに曲の出来が素晴らしいので、この曲にキャパビリティ・ブラウンのすべてを 出し尽くしてしまい、この次にこの曲を超えるほど素晴らしい曲を作れないため解散 したのでは?と考えてしまうほどの出来映えである。
たった2枚の作品(本作は2nd)を残して解散してしまったのが非常に残念である。


・IN THE LAND OF GREY AND PINK/CARAVAN(72)

カンタベリー2大バンドの片方であるキャラバンの最高傑作(もう片方はソフト・マシン)であり、 カンタベリー・シーンを代表する1枚。
カンタベリーというと、とかくジャズ・ロックというイメージでとらわれがちだが、 キャラバンは基本的に聴きやすくポップであり、 それにのどかなブリティッシュ・フォーク的一面を持ちつつ カンタベリー風ジャズ色がのっかったような不思議なサウンドである。
1st〜7thあたりまでは、どれも甲乙付けがたい名作ぞろいであるが、 特に6thのライブ盤はオーケストラと競演し成功しているのでお薦めである。
アルバムタイトル通りグレイとピンクを基調に描かれた ジャケットアートの素晴らしい本作は、 リチャード・シンクレアの暖かいボーカル(個人的に大好き)、 デイヴ・シンクレアのカンタベリー・オルガン・サウンド、 パイ・ヘイスティングの控えめなギターと繊細な(線が細すぎ!)ボーカルなどが のどかに流れていく美しい楽曲を作り上げており、 比類無き魅力に満ちあふれている。
特にB面全てを使ったNine feet undergroundの展開は素晴らしい。
ソフト・マシンになる中盤も良いが(さすが卵が同じ(Wilde Flowers)だけある...) 終盤のリチャードのボーカルが泣ける...
余談だが、その昔ポリドールが日本でCD発売したとき、 B面の出だし5秒ぐらいの音が切れていて、 頭に来てレコード会社に問い合わせたことがある!
CD用マスターテープを作成する際に、 海外のエンジニアが間違って削除してしまったのでは? という回答だったが.... 全くなんて事するんだ!(そのエンジニアは死刑だ!)
今発売されてるのは直ってるのかな?


・ONE/CIRKUS(71)

壮大なオーケストラアレンジを導入したドラマチックな名盤。
マニアでは「K」のサーカスと言われている (他にCIRCUS(イギリス:後にクリムゾン、キャメルに加入する メル・コリンズ在籍のジャズロックバンド)、 CIRCUS(スイス)が存在するため... サーカスといえば日本にも存在するけど!... ちなみにアルゼンチンといえばCRUCIS(紛らわしいぞ!))
オルガン、ギター、ボーカルとオーケストラのハーモニーが絶品であり ラストまで一気に盛り上がっていく。
ある時は繊細で美しく、またある時は力強く高揚感があり...といった感じの、 メリハリのある見事な作りである。
全体を通して、アルバムのジャケットのような スペーシーな世界が広がっており、 シンフォニックという言葉を代表するようなアルバムである。
自主制作盤であるが、 メジャーな作品群と比べ「感動」という点では全くひけをとらない。 (イギリスのマイナーシーンはこれだから怖い!)
これを再発シリーズの最初にもってくるなんて エジソンはほんとに目のつけ所が良かったなぁ...。


・WATERCOLOUR DAYS/CLOUDS(71)

無名ミュージシャンによるキーボード・トリオの2nd
キーボード・トリオといえば、同時期のナイス、エッグといった超個性派バンドが思い出されるが ハッキリ言ってこのクラウズは、この2バンドに比べ演奏面、音楽性などでかなり劣る存在である。 (デイブ・スチュアートやキース・エマーソンのような凄腕キーボーディストがいたわけでもないし)
しかしこのクラウズはナイスやエッグにはない、歌心のあるポップな一面を持っている。 人なつっこいメロディをベースに、劇的なオーケストラ・アレンジや クラシックの有名なフレーズを随所に織り込んだサウンドは、 まさにブリティッシュならではといった美しいものである。
肉体派のナイス、頭脳派のエッグとするとこのクラウズは庶民派?といったところだろうか...
実際のところ、オルガンマニア以外にはあまり自信を持っておすすめできないです...(^_^;)
オルガン・ロック好きな私は、個人的にこのバンドが好きで(B級臭さも含め) 1st(アメリカ盤)のLP,2ndLPを2枚、1stと2ndのカップリングCD(イギリス盤)を持っています。 1stはアメリカ盤、イギリス盤とタイトル/収録曲が異なるので おそらくこれで彼らの音源は全て押さえたと思います!(^o^)
(クラウズをここまで押さえてる人はなかなかいないのでは?)


・DOUGHTER OF TIME/COLLOSEUM(70)

ジャズ、ブルースあがりの名うての超一流ミュージシャン達により 各パートが固められたスーパーバンド。
音楽的な方向性はクリームに非常によく似ており ジャズ、ブルース色を残しながら、 ロックの可能性を広げようとする貪欲な姿勢が垣間見えますが、 この2バンドの違いは、クリームは3人という最小メンバーで挑戦し続けたのに対し、 コロシアムは多人数バンドでビッグバンド的要素を持っていたという点です。
リーダーであるジョン・ハイズマンの超絶ドラミングを始め クリス・ファーロウのパワフルで血管が切れそうなボーカルや 渋いサックスプレイが光るディック・ヘクストール・スミス、 後にグリーンスレイドを結成するデイヴ・グリーンスレイドの 安定したテクニカルなプレイだけでもすごいのに さらにオーケストラアレンジが絡んでおり、音の厚みに圧倒されます。
ロックのスタンダード的存在である、クリームのジャック・ブルースの THEME FOR IMAGINARRY WESTERN (マウンテン、グリーンスレイドもカバーしている... 結局デイブ・グリーンスレイドは2度カバーしてる。好きだねぇ!) も演奏されていますが、このヴァージョンが迫力という点でずば抜けています。
この後ライブアルバム発表し、コロシアムは解散してしまいますが 後に、ジョン・ハイズマン以外は全員別メンバー (ドン・エイリー、ゲイリー・ムーアなどまたまたすごいメンツ!)で フュージョン寄りサウンドのコロシアムIIとして復活します。


・OVER THE TOP/COZY POWELL(79)

数々のスーパー・バンドを渡り歩いた 偉大なドラマー、コージー・パウエルの1st。
インスト作品ですが、様々なタイプの楽曲が収録されていて そのどれもがキャッチーで耳に残ります。 コージーのシャープでダイナミックなドラムと ジャック・ブルースの表情豊かなベースの相性が抜群な上に、 ドン・エイリーがやり過ぎなぐらい(自分のソロと勘違い?) キーボードを弾き倒しています。 他にも、コロシアム人脈のクレム・クレムソン、ゲイリー・ムーア、 ジェフ・ベックと縁の深いマックス・ミドルトンが 彼らにしか出来ない渾身のプレイを連発させています。 ジョージ・マーティンが作曲しVDGGもカヴァーしたオープニング、 ゲイリー・ムーアに触発されてメンバー全員が火花を散らす2曲目、 後のEL&P結成を予想させる序曲1812年を取り込んだラストなど、 プログレ・ファン直撃の楽曲も多いです。 そうそう5曲目の出だしのエレピとベースの絡みが やたらグリーンスレイドっぽいことも付け加えておきます! (コロシアムつながり?(笑))


・CRESSIDA/SAME(70)

ヴァーティゴレーベルの数ある名オルガンロックバンド中の 1つであるクレシダの1st。
CD再発前は、1st,2ndとも1万円以上の高値がついており、 なかなか廃盤マニア以外には手が出せなかったが、 (それでも当時、1stの方が若干安かったため、1stだけは買った) CD再発されることにより、両作品とも簡単に入手できるようになった。
メインはもちろんオルガンであるが、 アコースティック、クリアトーンとファズトーンをうまく使い分けた ギターも隠し味になっている、ドラムも軽快で聴いていて小気味よい。
また、線の弱いボーカルも このバンドの繊細なサウンドを引き立てるのに一役買っており、 なんともいえない魅力を醸し出している。
メロディも難しいところもなくシンプルで、 どことなくイギリスの牧歌的な雰囲気が漂っている。 茶色い地味なジャケットを象徴するかのようなサウンドである。
2ndであるASYLUMは、首人形が燃えているキーフの ジャケットで有名。 プログレッシブという点ではオーケストラアレンジなどを導入し サウンドがカラフルになった2ndの方が上だが、 曲の出来にばらつきがあり、若干散漫な印象を受ける。
オルガンサウンドの素朴さ、親しみやすさなどから 今回は1stを選んだ(こちらがよりクレシダらしさを現していると思う)
ただし2ndには超名曲Munich(この1曲の出来だけが突出しており、 この曲を聴くためだけでも買う価値あり!)が入っているので、 CDで簡単に入手できる今、オルガンロック好きならこちらも押さえましょう。


・CZAR/SAME(70)

ジャケットの男のアップが怪しげな 謎のヘビーサイケプログレバンド、ツアール唯一の作品。
グレイシャスをヘビーにした様な...という紹介が有名である。 内容を聴けばそれがいかに的を射た表現かわかってもらえるでしょう... ってグレイシャスを聴いたこと無ければ全くわかんないですね...(^_^;)
グレイシャスファンなら(世界に一体何人いるんだろうか?)、 100%買いです。
逆に本作品を気に入って、万が一グレイシャスを聴いてなければ グレイシャスを必ず押さましょう(特に1st)。
ヘビーなギター、コーラス、 メロトロン、エレピ、ハープシコードが活躍する 荒々しくも美しいサイケなサウンドに触れるたび、 ほんとにグレイシャスの覆面バンドじゃないだろうかと 疑いたくなる。
どうでもいいが1曲目の中間部分のコーラスパートを聴くと、 毎回、迷曲ジンギスカン!を思い出して笑ってしまう...


・CACTUS CHOIR/DAVE GREENSLADE(76)

グリーンスレイド解散後に発表された、デイヴ・グリーンスレイドの1stソロ。 全プログレファンがCD化を待ち望んでいる名盤でもあります。
時代背景もあってか、グリーンスレイド4thのポップ路線延長線上の作品であり、 鍵盤楽器自体の進歩も手伝って音がかなり洗練されています。
1曲目などはまさにグリーンスレイドそのものといった感じの曲ですが、 他にもバンド時代には見られなかった、様々なタイプの曲をやっており、 なんとデイヴのボーカルまで聴くことが出来ます。 (そんなに上手くないですが、味があります。)
ドラマーとしてサイモン・フィリップスが参加しており絶大な効果を上げています。 どうやらデイヴのキーボードには、歯切れ良く手数が多いドラミングが 合っているようですね。 (名手アンディ・マッカロクの後は、これぐらいの人じゃないと!)
ロジャー・ディーンのジャケットも絶品です。
このテンションが、次の2ndソロ(一応フィル・コリンズも参加してるのですが、 「豪華ブックレット仕様」ぐらいしか魅力が思い当たりません。 個人的にこの作品は、パトリック・ウッドローフのイラスト集(音楽付き)と考えることにしています!) まで持続されなかったのは非常に残念です...


・DEEP FEELING/SAME(71)

この時代に多いオルガンを前面に出した ブリティッシュ・プログレの隠れた名盤。
ヴァーティゴやネオンのオルガン・ロック名盤群に ひけを取らない内容で、同傾向ではありますが、 レーベル(DJM)、ジャケット(キーフ、ヒプノシス、ロジャー・ディーンでは無い)、 が独特で、演奏が堅実でこなれている(悪く言えば行儀が良過ぎる)...といった 特徴があります。
シングル路線の牧歌的な歌ものも良いですが、 中盤のクラシカル・ガス (ベガーズ・オペラはこのカヴァーを聴いていたんでしょうか?) 〜ギロチンのプログレ的な側面が聴きどころとなっています。
演奏の上手さ、フォークもできる、カバーが得意、全員が歌える(コーラスが美しい)... など、CAPABILITY BROWNと共通点が多いです。


・EGG/SAME(69)

カンタベリーシーン初期に結成されたデイブ・スチュアート擁する キーボード・トリオ、エッグの1st。
キーボード・トリオということで 同時代のナイスと比較されることが多いが、 ナイス(特にキース・エマーソン)がクラシックに根ざした音楽性を持ち、 テクニックや即興的なソロにこだわったのに対し、 エッグはクラシックだけでなく、ジャズ、現代音楽など様々な要素を盛り込み、 非常に高度で計算されつくし、変拍子を多用した 複雑な楽曲を作り出している。
肉体派のナイスに対して、頭脳派のエッグといった感じであろうか?
音は古くさいが、今でも聴く度に新たな発見があり、 時代背景を考えると、いかにプログレッシヴな 素晴らしいバンドだったかがわかる。
この後、2nd,3rdと進むにつれ、実験色、前衛色が強まり難解になっていく。
聴きやすさを考えると断然に1stがおすすめである。


・GARDEN SHED/ENGLAND(77)

イギリスの70年代後半のマイナーシーンに生み落とされた ブリティッシュ・シンフォ最後の至宝イングランドの1st
ジェネシス系シンフォニック・ロックの教科書的アルバムである。
劇的な泣きのギターソロ&音色はスティーブ・ハケット、 小気味よい変拍子と独特のスネア音はビル・ブラフォード、 様々な使い方を見せるメロトロンはトニー・バンクス の影響下にあり、ジェネシス7割、イエス3割といった感じのサウンドである。
しかし、イングランドは単なるモノマネバンドとは異なり とにかく曲が良いのである。曲の出来でいったら本家をしのぐのではないだろうか?
特にA2とB3の劇的な展開、美しさといったら... 何度聴いてもため息が出てしまうほど素晴らしい感動的な出来映えである。
アルバムタイトルのガーデン・シェッド、バンド名のイングランドの 両方ともプログレ専門店の店の名前になるぐらいだから いかにそのサウンドが素晴らしく、マニアの心をとらえているかがわかるでしょう。
単なるモノマネだけではここまで評価されなかったはず!
近年幻の未発表2ndが突如発売され、マニアを大喜びさせたが、 やはりクオリティでは断然1stです。


・FIELDS/SAME(71)

元レア・バードのグラハム・フィールド、 元キング・クリムゾンのアンディ・マッカロク(マックローチとも呼ばれる)、 ゴードン・ハスケルのソロアルバムに関わったアラン・バリー、 といった強烈なメンバーで固められたキーボード主体のトリオ、 フィールズ唯一の作品。
A1の出来が素晴らしく格好良い。 スリリングで手数が多く軽快なドラミングと広がりのある独特の音色のオルガンの絡み、 ドラマチックな曲展開、哀しげなボーカル...まさに完璧な曲である。
この曲の出来だけが際立ってるような気もするが、この曲のためだけでも買う価値ありでしょう。
アラン・バリーが書いた曲が少々面白みに欠けるのが残念だが、 グラハムの曲はレアバード時代を彷彿とさせる佳曲ばかりである。
本作発表後、バンドは解散しアンディはグリーンスレイドへ加入することになるが、 グラハムはこの後メジャーシーンから消えてしまう。 これだけ才能のある人なのにもったいない...
なおジャケットには、ワシがウサギを捕らえている絵が描かれており、 よく見ると少々残酷である。


・SKELTON IN ARMOUR/FUSION ORCHESTRA(73)

美人女性ボーカリスト、ジル・サワードを中心とした プログレッシブ・ハード・ロック・バンド、 フュージョン・オーケストラが残した唯一の作品。
バックの演奏がとことんロックしていてドライブ感があり、 次から次へとテンポチェンジし、目まぐるしく展開を変えながら 曲の最後まで一気に畳み掛け、その中をジルの歌(ときおりフルートも飛び出す!)が 縦横無尽に駆けめぐる様は格好良く爽快です。
メンバーの演奏能力も相当高度ですが、 ジルの表情豊かなボーカルが無ければ ここまで魅力的な作品には仕上がらなかったでしょう。
相当な実力を持ちながら、本作品しか残せなかったことが非常に惜しまれます。


・GRACIOUS/SAME(70)

70年代ブリティッシュ・プログレの宝庫ヴァーティゴ・レーベルを象徴するようなバンド、 GRACIOUSのデビュー盤。
基本はサイケ+ハードロックながらクラシック要素を取り入れたり、 大作に取り組むなど明らかにプログレを指向しており、 ピアノ、エレピ、ハープシコード、メロトロンといった多彩なキーボード類 (ただしこの時代のバンドにしては珍しくオルガン未使用)と やたらヘヴィーなファズギター (個人的にはファズと聞くと真っ先にこのアルバムを連想します) を中心とした、繊細さと荒々しさを併せ持った内容となっています。
HEAVEN、HELL、THE DREAMといった抽象的なタイトルを具現化し、 様々な旋律や効果音の断片をつないでまとめ上げるコラージュ的手法を用いたスタイルは 非常にユニークなものといえます。
よりヘヴィー化した2ndも名作ですが、 勢いやアイデアでこの1stが勝っていると思います。 「!」マークのジャケットもセンスが良いですし... (ちなみにイタリアのプログレ作にこのジャケの回答のような作品があります。 マニアの方ならすぐにわかりますよね!(笑))


・GREENSLADE/SAME(73)

個人的に、マイナーなプログレバンドを探求し、廃盤探しをするきっかけとなった とても思い出深い作品(イギリス盤LP、国内盤LP、国内盤CDと3枚も同じものを持ってます。)
ギターレス、ツインキーボードという変則編成であり、 サウンドのメインとなる デイヴ・グリーンスレイド(COLOSSEUM)とデイヴ・ロウソン(WEB,SAMURAI,STACKLIDGE,...) 2人のキーボーディストの個性がうまく融合している。 ソロ、コード、リフ、メロディにおいて様々な鍵盤楽器の音が重なりあっている、が イタリアのバンドにあるような重厚さ、厚ぼったさはあまり感じられず 押しつけがましくない、自然で洗練されたさわやかな印象がある。 程良くジャズを消化しているせいもあるのだろうが、 クールで坦々としている部分にイギリスらしさが感じられる。
アンディ・マッカロク(KING CRIMSON,FIELDS,...)の手数の多いジャズドラミングも実に小気味良く 軽快でさわやかなバンドサウンドにとても良くマッチしている。
イエスでおなじみのロジャー・ディーンによるカバーアートも 魅力のひとつとなっている。
この後発表する 同傾向の2nd、クラシカル路線が強まった3rd(グラハム・スミスのバイオリンが美しい)、 最もロック色が強くキャッチーな4th(ギターも時折登場、バラエティ豊かな内容)全てが名盤と言って良いでしょう。 デイヴ・グリーンスレイドはその後ソロを2枚発表するが 1枚目「CACTUS CHOIR」はグリーンスレイドと同傾向の作品であり、 本作が気に入れば必携の作品です(何故CD化されないんだろう?)。


・GUN/SAME(73)

ブリティッシュ・ハード・ロックを開拓し、 シーンの発展に大きく貢献したガーヴィッツ兄弟の初作品となる名盤。
その後数多くのプログレ名盤のジャケットを手掛けた ロジャー・ディーンの初仕事でもあります。
一般的にはハード・ロックの範疇で語られるバンドですが、 このデビュー盤はサイケ〜アート・ロック全盛の時代背景を象徴するような プログレ黎明期的な作風となっています。 (クレイジー・ワールド・オブ・アーサー・ブラウン、 ヴァニラ・ファッジあたりに通ずる。)
ブラス・セクション、ストリングス、ピアノ、オルガンを大胆に取り入れ、 ギターの多重録音、テープの逆回転等を駆使した実験的なサウンドは、 ヘヴィで力強く、「60年代末のハード・ロック・トリオ」とは思えません。 得体の知れない魔力に満ち溢れています。


・THE ROTTERS' CLUB/HATFIELD AND THE NORTH(75)

カンタベリー系ジャズロックの歴史的名盤であり金字塔的作品! カンタベリーって何?と言われればまずこれでしょう。
ジャズの要素を取り入れた複雑な展開を見せながらも ポップでなめらかでどこかしら温もりのある 究極のカンタベリーサウンドを味わうことが出来る。
各メンバーの演奏テクニックは文句の付けようが無く、アンサンブルも完璧。
ソロでも楽器が必要以上に前に出てこないし、長さもちょうど良い。
本アルバムが名盤といわれ、大絶賛されるのは 非常に良く計算されたこの絶妙なバランス感覚にほかならないでしょう。
スパイロジャイラのバーバラ・ガスキン、 キャラバンでおなじみジミー・ヘイスティングら 参加ミュージシャンも豪華です。
リチャード・シンクレアのボーカル、 デイヴ・スチュアートのオルガン&エレピは何度聴いてもしびれます。


・CLEAR AIR TURBULENCE/IAN GILLAN BAND(77)

第2期DEEP PURPLEで大活躍した名ボーカリスト、 イアン・ギランがPURPLE脱退後に結成したバンド名義での最高傑作。
超人マーク・ナウシーフの躍動感あふれる手数の多いドラムと QUATERMASS、HARD STUFFなど数々のバンドを渡り歩いた職人ジョン・グスタフソンの 歯切れの良いベースが繰り出すスピーディーで変則的なリズムの上を、 キーボードとギターが弾きまくり、ギランが絶叫しまくるというスタイルは大変魅力的です。
また単なるハードロックに留まらず、 ジャズ、シンフォ、ファンク、さらには民族的要素まで取り込んでしまう意欲的な姿勢は まさにプログレッシブそのものです。 (この摩訶不思議なサウンドを強引にまとめあげた立役者、 コリン・タウンズの手腕は相当なものだと思います。)
PURPLE時よりさらにパワーアップしたと同時に、 黒っぽさを増したギランのボーカルは人によって評価が分かれるかも知れません (プログレファンは黒人系苦手な方が多いので!)が、 プログレ界の落とし穴的作品と言って良いと思います。 特にそんじょそこらのジャズ・ロック作品を軽く吹っ飛ばすぐらいの エネルギーを放っているアルバムタイトル曲(特にインストパート)は圧巻! 偏見を捨てて是非聴いてみて下さい。
本作を気に入られた方は、同じメンバーによる武道館ライブ2枚組 (怒濤のパフォーマンスに圧倒されます。PURPLEの曲がIGBアレンジで3曲も演奏されてます!)も セットでどうぞ。


・INDIAN SUMMER/SAME(71)

70年代マイナー系ブリティッシュ・ロックの宝庫である VERTIGOレーベルに継ぐ存在であるNEONレーベルを代表するオルガンロックの名盤。
バンド名は「小春日和」を意味します。
70年代イギリスのマイナー系オルガンロックといっても、 ハードでドラマティックなSTILL LIFE、 ソウルフルな女性ボーカルが魅力のAFFINITY、 といったように、様々な特色を持ったバンドが存在しますが、 彼らはメインのオルガンはもちろん、ジャジーなギター、味のあるボーカルだけでなく、 疾走感あふれるパーカッション、クールなヴァイブなどを導入し曲に起伏を設けています。
前述のSTILL LIFE、AFFINITYと同様に、 本作でもキーフによる素晴らしい写真がジャケットに使われています。 70年代ブリティッシュ、マイナー系、オルガンというキーワードに キーフのジャケットは似合いますね〜。
オルガン好きは絶対に外せない作品です。


・KEEPING UP.../JONESY(73)

アーサー・ブラウン、シン・リジィ、スコーピオンズよりも インパクトの強い薔薇ジャケ+重厚メロトロンでマニア人気の高い、 ジョン・ジョーンズ率いるプログレ・バンドの最高傑作2nd。
デビュー盤で披露したクリムゾン影響下のサウンドから 目覚ましい進化を遂げ、 メロトロン、ストリングス、トランペット、ピアノ等を効果的に配した ドラマティックな名盤となっています。
特に日本人の琴線を完全に理解しているとしか思えない ジェイミー・カレスのメロトロンは感動的...
スリリングなジャズ・ロック、泣きのメロディアス・シンフォだけでなく、 アヴァンギャルドな展開もみせるなど、 作風も幅広く、なかなか攻めた内容となっています。
彼らが発表した3作品の評価ですが、 なにげにニュー・イングランドのそれと一致するように思っています。 (粗削りだが躍動感があり可能性を感じさせる1st、 大きく成長しメロトロン度も高い名曲が揃った最高傑作2nd、 方向性が変わり悪くはないけど少し残念な3rd)


・KESTREL/SAME(75)

くちばし付きイギリス紳士?の笑顔の意味が良く分からないジャケットの ケストレル唯一の作品。
プログレッシブロックというよりは イギリスの伝統的な正統派ポップス(ビートルズ路線)に プログレ風アレンジを施した感じである。
1975年という時代背景も手伝ってか、聴きやすく、 メロディもアレンジもすっきりしており、 プログレとは無縁と思われる「さわやか」な一面を持っている不思議なバンドである。
中心人物デイブ・ブラックのギターが素晴らしく、 バッキングのコード弾き、ソロのフレーズ、音色などが独特であり、 聴けばすぐデイブだとわかるほどのオリジナリティを確立している。
またジョン・クックのキーボードのセンスも良く、 転がるようなエレピ、レスリースピーカの使い方が効果的なオルガン、 そしてメロトロンなどが全面に展開されていく。
特にバラードのメロトロンのリバーブ処理(ラスト)や そこに流れるデイブの泣きのギターソロは必聴もの。
彼らはこの1枚を残した後、デイブがデビッド・ボウイのバックバンド THE SPIDERS FROM MARS(アルバム1枚を残している、デイブのギターが炸裂!)に 引き抜かれあっけなく解散してしまう。 ボウイの馬鹿〜!(忙しいミック・ロンソンが悪かった?)、 もっとケストレルの作品を多く聴いてみたかったのに...
ちなみにケストレルとはチョウゲンボウという 空中で静止できる特技!を持つ鳥のことだそうです。


・SPACE SHANTY/KHAN(72)

カンタベリーシーンを代表するミュージシャンである デイヴ・スチュアートとスティーヴ・ヒレッジが在籍した スーパーバンド唯一の作品。
もともとデイヴとスティーヴは、カンタベリーシーン最初期の 幻のバンド、ユリエル(アルバムはアルザチェル名義で発表) で組んでいたので息もぴったりの素晴らしいサウンドを聴くことが出来る。
デイブ・スチュアートの独特な音色のオルガンと スティーブ・ヒレッジのワウ、ディレイを効果的に利用した スペーシーでサイケなギターのマッチングが不思議な調和を生んでいる。
しかし忘れてならないのは、 元クレイジー・ワールド・オブ・アーサー・ブラウンの ニコラス・グリーンウッドのベースであり、 このバンドの隠し味となるような特徴のあるプレイを披露している。
カンタベリー系の作品では5本の指に入るほどの大傑作ではないだろうか?
本作のみで解散してしまったのが残念である。


・MAINHORSE/SAME(71)

後にYESに在籍し、名作RELAYERを残すことになる スイスの名キーボーディスト、パトリック・モラーツ参加のブリティッシュ・ハード・ロック。
モラーツと言えば後のシンセのイメージが強いが、 ここではハードにオルガンを弾きまくっている。 (というよりも暴れまわっているという表現が正しいかもしれない。) イエス在籍時のイメージでこのアルバムを聴くとかなり驚く人も多いのでは?
そのオルガンプレイであるが、 クラシカルかつテクニカルなフレーズが多いので NICE在籍時のキース・エマーソンにイメージがだぶる。
ただ、このバンドは決してモラーツのワンマンバンドでは無く、 他のメンバーもかなりの演奏能力を持って健闘しています。 彼らの健闘無くしては、このアルバムは傑作にはならなかったでしょう。
70年代ブリティッシュ独特の暗い雰囲気は、 1期PURPLEやWARHORSE(バラードでのくぐもった声は特に)を彷彿とさせる(なんとHORSEつながり!) ので、NICE+WARHORSEといった感じのクオリティの高いアルバムとなっています。 よって、YESファンよりもこの2バンドが好きな人に特に聴いてもらいたい作品です。
当時来日していたという話は本当なんでしょうか?


・MANDALABAND/SAME(75)

シンフォ...いわゆる「シンフォニック・ロック」を 象徴するような超名盤。
特にA面すべてを使った曼荼羅組曲の出来栄えは圧巻... シンフォニーとロックが究極レベルで融合しています。
流麗なメロディ、緻密でドラマティックな楽曲構成、 多彩なキーボード、歌いまくるギター、 手数の多い疾走感抜群のドラム、 個性の塊のようなヴォーカル、 チベット仏教を扱った特異なコンセプト... あらゆる要素が満点以上の感動的な内容となっています。
B面の楽曲はあまり語られることがありませんが、 比較対象となるA面がイレギュラー過ぎるだけで、 余裕で名盤レベルの楽曲が並んでいます。
さらにファンタジック度合いが向上した 長編感動映画のような2ndも必聴の名盤ですが、 本作に比べるとロック的な熱量が薄味なので、 個人的には1stを推したいと思います。


・COLD CUTS/NICHOLAS GREENWOOD(72)

クレイジー・ワールド・オブ・アーサー・ブラウン、カーンといった プログレッシブなセンスを持った個性派バンドを支えたベーシスト、 ニコラス・グリーンウッドによるソロ作。
得体の知れないどこか気持ちの悪いジャケットが象徴しているように、 70年代ブリティッシュ特有の重苦しい空気とねじれた世界観が アルバム全体を支配しています。
クレイジー・ワールド・オブ・アーサー・ブラウンの特異な音楽性を さらにプログレッシブにしたようなサウンドであり、 圧倒的なエナジーで暴れ狂うだけでなく、 荘厳で叙情的な引きの場面も用意されています。
SEやストリングスの導入も効果的であり、 時折今聴いてもはっとするような斬新なアプローチが出てきます。
また本作を語る上で外せないのが、ディック・ヘニンガムのオルガンです... その切れ味はすさまじく鬼気迫るものがあり、 ヴィンセント・クレインやデイヴ・スチュアートといった、 ニコラス・グリーンウッドが競演した名プレイヤーに決して負けていません。
やたらと高価なプレミアに内容が伴わないアルバムは山ほどありますが、 本作は高値で取引されていることが頷ける数少ないアルバムのうちの一つです。


・PATTO/SAME(70)

クリムゾンの1stを線画で表したような(メイ・ブリッツの線画と同作者) 強烈なジャケットが目印のパトゥのデビュー盤。
基本はブリティッシュ・ハード・ロックだが、単なるハード・ロックでは無く、 ジャズの要素を大胆に取り入れたプログレッシブで 自由奔放な演奏を聴くことが出来る。
特に故オリー・ハルソールのギターはすさまじいものがあり、 例えばSan Atoneの屈折、脱線ぶりなどは見事というしかない。
オリーは様々なタイプのフレーズを弾いているが 何を弾いても自分の色を出し、どれも他人には真似の出来ないオーラを放っており、 どんなことをやっても格好良く、そういう点ではジェフ・ベックと似たものを感じる (ミス・トーンを出しても格好良くなってしまうような...)
全ロック・ギタリストは必聴の作品ともいえるでしょう。 (このギターのすごさがわからないようなら、ギター弾くのやめましょう!)
がなるように熱唱するマイク・パトゥの声も特徴的で、 体中から絞り出すようなしゃがれ声は情感が伝わってくるようで 聴いている側も思わず力が入ってしまう。
またドタバタしたドラム、時として奇妙なラインをきざみだすベースなど 全メンバーが一筋縄では行かない強烈な個性を放っている。
独特の熱気を持ちながら、全体を通じてクールな雰囲気が漂っており、 70年代ブリティッシュハードそのものを示す好サンプルともいえるでしょう。 後の作品では重苦しさが薄れ、作風が明るくなっていきます。
マイク・パトゥ、オリー・ハルソールはPATTO以外にも、 TIMEBOX、BOXERというバンドでコンビを組むほど仲が良く、 今は2人揃って天国にいます。きっと天国でもコンビ組んでることでしょう(^^)


・RARE BIRD/SAME(69)

恐らく史上初と思われる ツイン・キーボード、ギターレスという変則編成バンド、レア・バードの1st
ツイン・キーボードとして使用されている楽器は オルガンとエレピのみである(完全分業制!)。
グラハム・フィールドのオルガンを中心とし、 荒削りながらもドラマティックでスリリングな曲が多く、 ちょうどナイスにエレピ奏者が加わったようなサウンドである。
攻撃的なA1、ELPが演奏しそうなポップなA2、 後にキャパビリティ・ブラウンがカバーするドラマティックなB1、 設立されたばかりのカリスマレーベル初のヒットとなった 大ヒットシングルB2を含むなど名曲が揃っている。
2ndのAS YOUR MIND FLIES BYも素晴らしい作品である。
B面全てを使った組曲FLIGHT(なんと混声合唱団入り)が有名だが、 ハープシコードと力強いスティーヴのボーカルが印象的な A2(個人的にはハープシコードを使った曲中BEST3に入るほどの 出来だと思う)が存在するA面の方が内容が充実していると思う。
演奏面、録音状態、アレンジなどで格段の進歩をみせており、 最高傑作と言われているが、スリリングな一面が 薄れてしまっているのが少々残念である。
2nd発表後グラハムが脱退(フィールズを結成)し、 バンドは衰退していくが...ツイン・キーボード、ギターレスという思想は グリーンスレイドによって受け継がれた。
ちなみにグラハムは 最初からギターレスという方向性にこだわっていたらしく 最初に組んだバンド、タペストリーもギターレスだったそうな...


・REFUGEE/SAME(74)

キース・エマーソン、リック・ウェイクマンと互角の才能を持った スイス人キーボ−ディスト、パトリック・モラーツが 元ナイスのリズム隊2人と結成したキーボード・トリオの唯一作。
超絶キーボードの魅力を最大限に引き出す術を 世界一心得ているリズム隊の上を、 シンセ、ピアノ、オルガン、エレピ、メロトロン... 豊富な鍵盤楽器を縦横無尽に操る モラーツのクリエイティブでアグレッシブな演奏が 駆け抜けていくわけですから名盤にならないわけがありません。
オルガンがメインのパートでは ナイスを彷彿とさせる場面もありますが、 メロトロンやエレピが出てくると一気に印象が変わります。
今後さらに大きく進化する可能性を感じさせる 鮮烈な内容だけに、 バンドが短命に終わったのが非常に惜しまれます。
モラーツを引き抜いたイエスを恨みたくもなりますが、 この後モラーツとの化学反応でリレイヤーが産まれるので、 良しとしましょう!


・PRE-FLIGHT/ROOM(70)

超絶ドラマーをはじめ、ジャズ、ブルースを下地とした技術の高い ミュージシャンが集結しただけでなく、オーケストラまで導入した、 起伏の激しいハードでパワフルなサウンドが COLLOSEUMの最高傑作DAUGHTER OF TIMEを髣髴とさせる影の名盤。
圧倒的な演奏に飲み込まれずに歌い上げる、AFFINITYのリンダ・ホイルと EARTH & FIREのジャーネイ・カーグマンを足し合わせたような 女性ボーカリストの表現力も全く負けていません。
そのため「女性ボーカル入りコロシアム」という表現で紹介されることが多いのですが、 このバンド最大の魅力は、果敢な実験精神で新しいスタイルを確立しようという 意気込みでしょう。演奏からその熱気がひしひしと伝わってきます。
アンドロメダはどことなく「宮殿」を連想させる佳曲だと思います。


・THE WORLD AT MINDS END/SKYWHALE(77)

無名ながら、全プログレ・ファンが耳にしておくべき 圧倒的な完成度を誇るブリティッシュ・ジャズ・ロックの大名盤。
ザッパ、ソフト・マシン、ハットフィールズ、アルティ、RTF、マハビシュヌ... といった偉大なジャズ・ロック〜フュージョン・バンドの要素をしっかりと吸収し、 複雑に組み合わせることで、見事に自分たちの音を形成しています。
さらに面白いのは、アナクルーサ、コルテックス、グネッシュ...といった B級個性派バンドにも通じる音楽性を兼ね備えているところでしょう。 すこぶる贅沢で奥が深い音楽性のおかげで何度リピートしても全く飽きが来ません。
「プログレ」という一大ムーブメントが終焉を迎えつつあった1977年のイギリスにおいて、 過去の名盤のおいしいところを寄せ集めて総決算的な名盤を作ったという点では、 イングランドのジャズ・ロック・バージョンと呼べるのではないでしょうか?
イングランドみたいに未発表音源が残っていたり、 再結成して来日したりしてくれないかなぁ...


・BELLS, BOOTS AND SHAMBLES/SPIROGYRA(73)

ブリティッシュ・フォーク究極の名盤である、 スパイロジャイラのラストアルバム。
バーバラ・ガスキンの純粋ではかなげなボーカルがこよなく美しい。
アコースティックギターを基本に、 フルート、ピアノ、ストリングスなどシンプルな楽器による 繊細なアレンジがまた素晴らしい。
余分なものがすべてそぎおとされ全く無駄のない、 悟りを開いたような音世界は奇跡的であり、 心が洗われるような感覚に陥る。
チューダー・ロッジ、メロウ・キャンドルのアルバムと並び ブリティッシュ・フォーク三種の神器!と呼ばれていることは マニアックなプログレ・ファンには有名な話だが、 この作品が1歩抜きんでているでしょう。


・SPRING/SAME(71)

トリプル・メロトロン、ネオン、キーフ... マニアやコレクターの大好物がてんこ盛りとなった ブリティッシュ・プログレの名盤。
取り扱いが難しく、使い方にセンスが問われる 魔性の楽器「メロトロン」の可能性を追求し、 数多くの場面で、場面に応じた様々な音色を使い分け、 他の楽器やメロトロン同士を重ねてきっちりと1枚の名盤に仕立て上げています。
ただ本作の魅力はそれだけではありません。 バンド名やジャケットからイメージされる「春」を思わせる のどかでゆったりとした日常を切り取ったようなイギリスらしい空気感が絶妙で、 耳にしていると疲れている心が癒されていきます。 (その昔、夢にまで見た本作をブートで初めて耳にしたとき、 プログレにスリル、格好良さ、非日常さを求めていた時期だったので、 B面の小曲SONG TO ABSENT FRIENDS(THE ISLAND)には感動したものの、 インパクトの弱さにがっかりしたのは今となっては良い思い出です (本作が愛聴盤となるまでには少し時間がかかりました))
ネオン&キーフ&71年といえば他にインディアン・サマーという名バンドがいますが、 バンド名(小春日和)やサウンドもどこか似ているのが面白いです。
そういえば、以前からなにげにドラムがうまいと思っていたんですが、 のちにダイアー・ストレイツに加入することを最近まで知りませんでした(恥)


・STILL LIFE/SAME(71)

「これを聴かずしてオルガンロックを語る無かれ!」と声を大にして言いたい オルガンロック究極の一枚。
個人的思い入れが強く以前から記念すべき100枚目に紹介しようと思っていました。 私にとっては例えるならYESやGENESISよりも思い入れがあり、 最も高額(23000円=紙ジャケ再発盤の10倍!、当時の貧乏学生には辛かった...) で入手した作品でもあります。
10年以上前、友人に聴かせてもらい衝撃を受けてから原盤を探し回り、 紆余曲折を経て、ついに目白WD(まだSYビルの頃!)で発見し購入したときの 興奮は今でも覚えています。
収録曲全てが、押しと引きのバランスが絶妙な名曲であり、 バンド全員が一丸となった70年代ブリティッシュの良さが凝縮されたような演奏に 魂を揺さぶられっぱなしです。
しかし極めつけはなんといっても神憑り的なオルガンプレイにつきます。 情念を押さえたような叙情的な雰囲気を醸し出したと思いきや、 一旦盛り上がり出すと、グリッサンドを多用したど派手なスタイルで、 これでもかというすさまじい熱気と迫力でぐんぐん迫ってきます。 オルガニストは、生まれてからずっとオルガンと生活してたのでは?... と思えるほど楽器の特性を知り尽くしています。
同ヴァーティゴのクレシダ、アフィニティらオルガンロックの名作も、 この作品の前ではやや霞んでしまいます。
シンセもメロトロンもストリングスもヴァイオリンも合唱団もありませんが、 オルガン一つでここまで感動的な作品を作り上げることができるんですね。 「STILL LIFE」というバンド名そのものを物語っている、 キーフによる美しいジャケットも秀逸です。
今後も本作を超えるオルガンロック作品が出現することは無いでしょう。


・SUPPLY DEMAND & CURVE/SAME(76)

アイルランドのプログレ・バンドによる唯一作。
知名度の低さとは反対にクオリティが高く、 気品、ユーモア、牧歌的要素などブリティッシュ風味が濃密で、 聴きごたえたっぷりの名盤となっています。
サウンドはGGやカンタベリー系に喩えられることが多いですが、 他にも、フュージョン風味があったり、美声女性ヴォーカルが出てきたり、 ケルト色を取り入れたり、様々なアプローチで聴き手を飽きさせません。
どんなタイプの楽曲でもさらりとこなしてしまう メンバーのプロフェッショナル演奏技術も光ります。
個人的にはキーボードの音色選びで 時折グリーンスレイドが頭を過りました。


・IT'LL ALL WORK OUT IN BOOMLAND/T2(70)

ハード・ロックからプログレッシブなアプローチを試みた 名トリオT2による創造性に満ちあふれた名盤。
ピーター・ダントン、キース・クロスという 二つの特異な才能がぶつかり合うことで、 GUNやMAY BLITZといった偉大なハード・ロック・トリオと同様、 とてもトリオの音とは思えない、 クリエイティブかつダイナミックな世界を作り出しています。
攻撃的なパートでは凄まじい手数で破天荒に暴れておきながら、 時折荒涼とした静寂パートを織り込むなど 緩急のコントロールも絶品です。
彼らはこの1枚のみでシーンから消えてしまいましたが、 このあと彼らが残したお蔵入り音源が現在は簡単に入手できます。 質が高いのであわせてのチェックをおすすめします。


・TREVOR RABIN/SAME(78)

後に後期イエス躍進の立役者となる、南アフリカ出身の天才アーティストの全世界的ソロデビュー盤 (正確にはタイトル、ジャケットが異なり、曲目も若干異なる南アフリカ盤が存在。)
全くやる気の見られないジャケットに反して、 密度が物凄く濃い傑作アルバムとなっています。
シンフォ、ハードロック、ジャズロック、ポップス、AOR... とにかくこちらが考え付かないほど幅広い音楽要素が センスの良いギタープレイをともなって次々と飛び出してきます。
またアルバム全体の洗練度も高く、たった1人だけで全曲の作曲はもちろん、 ドラム以外の楽器を全て担当し、プロデュースもこなしているとは到底思えません。 ギタリストだけでなくマルチプレーヤー、コンポーザー、プロデューサーとしても 超一流であり、個人的にはトッド・ラングレンに近い才能を感じます。
恐らくトレヴァーは才能が拡散しすぎているために過小評価されているんでしょう。 特に日本での評価は低すぎるように思います。


・DANGER MONEY/UK(79)

プログレ界が完全に下火となっていた70年代終焉に突如救世主として現れた、 イギリスプログレ界のスーパースターによるスーパーバンド、UKの2nd
各メンバーが関わったバンド、アルバムを挙げだすときりがないです。 (KING CRIMSON,YES,ROXY MUSIC,CURVED AIR,GONG,URIAH HEEP,FRANK ZAPPA,TEMPEST,JETHRO TULL...)
ビル・ブラフォード、アラン・ホールズワース、 エディ・ジョブソン、ジョン・ウェットンの4人による第1期の1st、 ブラフォード組(ビルブラ&ホールズワース)が抜け、代わりに ザッパつながりのテリー・ボジオが加入したトリオ編成による第2期の2nd、 傾向は異なるものの、どちらも大名盤=必聴。 ブラフォード、インストものが好きなら1st、 エイジア、うたものが好きなら2ndがお薦めと言ったところでしょうか?(乱暴すぎ?)
個人的には、トリオという最小編成になったことで、 各人の役割分担が明確となり、個性のつぶしあいが無くなった2ndが気に入っています。 (テリー・ボジオの若さ爆発ドラミングも最高だし)
90年代に入り再結成、レコーディングまで終わっていながら、 音源がお蔵入りとなったのは非常に残念です。
そのかわり?オフィシャルで初めて第1期(4人)UKのライブ音源が出ましたが、 まとまりに欠ける印象で、メンバーのポテンシャルを考えるとちょっと残念な内容でした。 (2ndの曲をスタジオ盤と聴き比べると特に感じる。) とはいってもこのメンバーなので、演奏内容は当然すごいです。


・WARHORSE/SAME(70)

ディープ・パープルの初代ベーシストであるニック・シンパーを中心とした パープルと同編成、同路線の本格派ブリティッシュ・ハード・ロック・バンドの1st
パープルの遺伝子が引き継がれたのかサウンドはとにかく1期パープル (スター・キャッスルのイエスほどではないが相当似てる!)である。
オルガンはジョンロードに、ギターはリッチーに似ているし、 ボーカルもロッド・エヴァンスっぽい(突然イアン・ギランになったりもする!)し、 曲構成やリフも、その他アルバム内で他バンドのカバーをやっているところまで 似ているのである。
...と、このように書くと とかくパープルの亜流バンドでテクニックが劣ると思われがちだが 各メンバーともかなりの実力者であり、表現力豊かである。 曲もどこか哀愁が漂いながら、ドラマチックな展開を見せ、 今聴いても十分聴き応えのある素晴らしい輝きを放っている。
特に名バラードB2の出来は本家をしのぐほどの出来で、 ブリティッシュ・ハード・ロック史上に残るほどの曲である。
2ndも同傾向の素晴らしい作品だが、 インパクトの大きさと、キーフのジャケットの美しさから、 この1stからチェックするのが良いでしょう。


・I SPIDER/WEB(70)

後にサムライ、グリーンスレイド、スタックリッジなどのバンドを渡り歩き 数多くの名盤に携わってきた、名キーボーディスト、 デイヴ・ロウソンが完全に主導権を握った渋いブリティッシュ・ジャズ・ロック。
ロウソンが全曲の作曲を担当し、 サウンドの核となるオルガン、ピアノ、重苦しいメロトロン、 くせのある独特のボーカルなど大活躍しているが、 グリーンスレイド時代のメジャーでポップなイメージとは180度異なった 渋くどんよりとした暗い雰囲気がアルバム全体を通じて漂っている。
いかにロウソンの才能が素晴らしいかが良く分かる作品である。
カンタベリーとは違うタイプのブリティッシュ・ジャズ・ロックということで マンフレッド・マン・チャプター・3にも若干似ているが こちらの方がロック色が強くヘビーで攻撃的である。
空と海をバックに手と動物の写真を合成させたジャケットのアイデア (TOE FATの1st(こちらも空と海をバックに、指と人間の体の写真を合成させたもの) に非常に似ていると思う!...)も素晴らしい。


・AN ELECTRIC STORM/WHITE NOISE(69)

ビートルズやビーチ・ボーイズも通過した 前衛的で実験的な電子音楽をひたすら突き詰めた名盤。
のちのジャーマン・ロックにつながる作風とも言えるし、 元祖アヴァン・ポップという見方もできる、 奇妙で異質な作風が貫かれています。
根底は信じられないほどポップなんですが、 過剰で執拗なサウンド・コラージュの連続に、 悪酔いしてしまいます。
どこまで本気でどこから遊びなのか、 そもそも芸術なのか単なる実験成果なのか、良くわかりませんが、 音楽の奥深さを知ることのできる貴重な作品といえます。


・ODESSEY AND ORACLE/THE ZOMBIES(68)

サージェントペパーズ、ペットサウンズと同系統の、 ロック、ポップス草創期に生まれた大名盤。 きれいなメロディによる美しい楽曲群に 様々な実験的要素を詰め込んだ魅力たっぷりのアルバムである。
録音にはアビーロードスタジオが使用されており、 同じイギリスということでビートルズ色もあるのだが、 主体となるコーラスは明らかにビーチ・ボーイズの影響大(というかそのもの?)であり、 ビートルズよりはビーチボーイズに近く、 個人的にこのアルバムはペットサウンズに対するイギリスからの回答だと思っている。
アルバムの中身をそのまま絵に置き換えたようなサイケなジャケットも良いです。
もし、ビートルズ、ビーチ・ボーイズが好きで、この作品を外しているなら絶対に聴きましょう。 ロッド・アージェントによる効果的なメロトロンも随所に出てくるので、 メロトロンファンも要チェックです。



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