名盤紹介その1(ヨーロッパ編)

 その2(ヨーロッパ以外編)へ   その3(イギリス編)へ 

 今まで聴いてきたプログレッシブ・ロック作品の中から これぞ名盤!と思った作品を、少しずつ紹介していきたいと思います。
 あえて、メジャーどころは外してあります!(中級者向き?)
 「こんな駄作が入ってるのに、何故あの名作が入ってないんだ?」 など、苦情、ご意見等あるかと思いますが、 あくまで個人的な感想ですので、大目に見てやって下さい!
原則として1アーティストに対し代表作1枚に絞って紹介していきます。
本ページはヨーロッパ編ですが、 イギリスだけは枚数が多いので別ページにします。



 イタリア

・INTORNO ALLA MIA CATTIVA EDUCAZIONE/ALUSA FALLAX(74)

邦題「私の奇妙な教育法について」というタイトル自体が「奇妙」で印象的な作品!
イタリアの中でも相当マイナーなバンドであり、情報もほとんど知られていませんが、 楽曲は地味ながらも名盤と呼ぶに相応しい内容です。
歌メロの美しい13曲もの小曲を寄せ集め、展開をコロコロと変えながらも、 強引にアルバム全体でトータル性をもたせており、 アコースティック・ギターやピアノ、オルガンを主体に、 華麗なフルート、力強いサックスがメリハリをつけた演奏の上を、 イタリア特有のしゃがれ声のボーカルが情感豊かに歌い上げていきます。
I GIGANTIの名盤、TERRA IN BOCCAにかなり似た作風だと思うのですが如何でしょう? いずれにせよイタリア以外では絶対に出てこない音と断言できます!


・APOTEOSI/SAME(75)

イタリア語で「神格化、化身」を意味するバンド名を持つ シンフォバンド唯一の作品。
チェレステ並みに金を全くかけて無さそうな安易なジャケットとは裏腹に、 中身はシンセ、フルート、変拍子、女性ボーカル...とシンフォ要素満載の 充実したものになっています。
70年代前半の同国の巨人バンドの影響が随所に見られるので、 イタリアン・プログレ好きが集まって作ったようなバンドにも感じます。 (音は全く違いますが、そういう意味ではENGLANDに似てるかも知れません)
演奏面で目立つのがとにかく手数が多く複雑なリズムをきざみたがるドラマーで、 キレが抜群なので曲がしまって聴こえ爽快感があります。
時代が新しいせいかアレンジが洗練されており、 その分イタリアらしい泥臭さが希薄なので、 根っからのイタリア好きには物足りなく感じるかも知れません。 録音状態も後から録音し直したのでは?と思えるほど良いです。
やっぱり録音にお金をかけすぎて、 ジャケットにかけるお金が無くなったんでしょうか!(^^;)


・TILT/ARTI E MESTIERI(74)

イタリアの誇る超絶テクニック集団の1stであり、 世界的に見ても頂点の一角に位置するジャズロックの金字塔。
このバンドはなんといっても、フリオ・キリコ(元TRIP)のドラミングにつきます。
想像を絶する手数の多さは尋常ではなく、 本当に同じ人間のなせる技なのか?と耳を疑いたくなります。 これは全ドラマー必聴でしょう!
基本的に構築美系ジャズロックですが、そんなに複雑ではなく 展開にメリハリがあり聴きやすいです。
2ndも素晴らしい出来だが、聴くなら2ndまででしょう。
全盛時のLIVE音源もCD化されており、これまた信じがたいほどの すさまじいパフォーマンスを展開しています。


・YS/IL BALLETTO DI BRONZO(72)

とにかくヘビー...最初から最後まで4人のメンバー全員が 鬼気迫るテンションで延々と弾き倒し続けるイタリアン・ヘヴィー・シンフォを 代表する名盤。
特に、キーボードのジャンニ・レオーネの表現力が素晴らしく、 メロトロン、チェンバロ、オルガンと様々な鍵盤楽器を使い分けている。
全ての才能をここで使い果たしたのではないかと思えるほどである。
曲自体も荘厳で神秘的な雰囲気に包まれている。
ちなみにタイトルは「ワイエス」でも「イプシロン・エッセ」でも無く 「イース」と読みます!


・BELLA BAND/SAME(78)

内容の素晴らしさが伝わらないジャケットで明らかに損をしている イタリアの短命ジャズ・ロック・バンドによる名盤。
個性の化け物がごろごろ転がっているイタリアものの中では、 やや地味に感じられますが、 軽快で鋭利なリズム隊の上で、サックス、ギター、キーボードが 時にスリリングに、時にクールに絡み合う 知性的な演奏と楽曲に満足しないジャズ・ロック・ファンはいないと思います。
インスト4曲を収録していますが、 それぞれタイプが異なるので、 最初から最後までだれることなく楽しむことができます。
バンドが存続していたら本作とはまた異なるタイプの楽曲を 多く生み出していたんでしょうね...


・DENTRO/LA BOTTEGA DELL'ARTE(77)

イタリアのお家芸であるラヴ・ロックの中でも イ・プーやジャルディーノの名盤群と並ぶ、 ひときわシンフォニックな感動作。
ふんわりと包み込むような大らかな愛から、 切なく折れてしまいそうな愛まで... この時代のイタリアならではのロマンを感じさせる 美しいドラマに酔いしれることが出来ます。
荘厳でクラシカルなキーボードの使い方は、 同国の名だたるシンフォ・バンドと比べても 決してひけをとりません。
ジャケットを見るとマキ&オズの2ndを思い出すのは 私だけでしょうか?


・BUON VECCHIO CHARLIE/SAME(71?)

マーキー&エジソンが共同で創設した "MELOSレーベル"(この作品を世に出すためだけに作られた?) の第一弾として、90年にやっと日の目を見た未発表お蔵入り音源である。
「幻の作品」というふれ込みで、当時、噂が噂を呼び、 発売まで時間がかかったこともあって前評判が高かったが 内容はそんなに大騒ぎするほどでもなかった ...がやはり一聴の価値はあるでしょう。
サウンドはナイス+吹きもの(フルート、サックス) +カンタウトーレといった感じ。
やたらロールしまくるドラム、 パンしまくるオルガンは時代を感じさせる。
アルバム内3曲中のうち2曲が ロックバンドがとりあげるクラシック曲の定番中の定番である 禿げ山の一夜(ファイヤーバレー、ニュートロルス、メコンデルタなど) 山の魔王の宮殿で(エッグ、サバタージ) をやっていて、この手のファンはたまらないかも。


・PRIMAVERA/CATERINA CASELLI(74)

イタリアの音楽シーンが最もプログレ化していた時代に作り出された、 女性ボーカリスト、カテリーナ・カセッリのシンフォニックな歌もの作品。
「春」をテーマにした素朴で温かみのある楽曲を彼女が優しく歌いあげ、 それを分厚く力強いオーケストラと合唱団が何重にも包みこんでいき、 ゆったりとした感動的な山場を何度も迎えます。
誰もがこのアルバムを聴き終えたあと、 心が穏やかな気持ちで満たされている事に気付くことでしょう。
それにしても普通のポップス歌手がこれほどプログレに寄ってしまうとは... 当時のイタリアのプログレ熱がいかに凄かったかが伺えます。


・CHERRY FIVE/SAME(75)

「チェリー・ファイブ」という女の子5人組B級アイドルグループ!を連想させるような かわいい名前のバンド(ユニット)の唯一の作品。
クレジットに詳しいことが書かれておらず謎が多いのですが、 とりあえず女性アイドルグループではありません! GOBLINの中心人物クラウディオ・シモネッティや、 ドラマーとしてカルロ・ボルディーニが参加しています。
ヘヴィーなギター、メロトロンやオルガンやピアノやチェンバロといったカラフルなキーボード、 手数の多いバタバタドラミング、英語の歌詞...などから、 IBISの1stに非常に近い作風に感じます。(IBISを若干軽めにしたような感じ?)
イタリアらしく仕掛けやキメを強引に多く盛り込んでいるせいか、 構成力が若干弱いような気もしますが、 その分やたらスピーディーでスリリングな傑作に仕上がっています。
STARCASTLE程ではないですが、かなりYESな楽曲が1曲存在しています。 (A2、ギターはハウだし、ベースはスクワイアだし...コーラスワークもそのもの!) 当時YESの影響がいかに大きかったかを物語っているといえるでしょう。


・CORTE DEI MIRACOLI/SAME(76)

幻のグロッグレーベルを代表する作品であり、 ニュー・トロルス、ラッテ・エ・ミエーレ、メタモルフォーシあたりの キーボードをメインとしたイタリアンシンフォのビッグネームと比べても 全くひけを取らない素晴らしいアルバム。
内容はニュートロルスからハードな部分を取り除き、 よりシンフォでメロディアス指向にしたイメージで、 ギターレス(1曲目の出だしのみニュートロルスのヴィットリオが 絡みつくようなギターを弾いている。)、 分厚いツイン・キーボード、疾走感を与えるパーカッションを特徴とし、 イタリアンシンフォの様々な要素(攻撃性、押し、泣き...)において 水準を軽くクリアした、コテコテのイタリアンシンフォサウンドが聴ける。
多彩なキーボード群が素晴らしく、アルバムを通じて重厚に音が重ねられており、 迫力十分、ギターがいないことなど全く感じさせません。
ソリーナの多用がまたイタリアらしさを感じさせてくれます。
ジガンティあたりにも通じる、イタリア臭がプンプンする歌メロと 熱情歌い上げタイプのボーカルも良いです。
76年という年代を考えれば、若干古くさい音かも知れないが、 70年代前半のイタリアが最も熱かった時代のサウンドが好きな ファン(私もその1人です!)には逆にたまらない作品でしょう。


・ETNA/SAME(75)

イタリアのテクニカル・ジャズ・ロック最高峰。 その完成度はアルティ・エ・メスティエリに全く引けを取らない。
中期RTF(リターン・トゥ・フォーエヴァー)と同じ キーボード、ギター、ベース、ドラムの四人編成であるが RTFと比べ、キーボードにエレピを多用、 甘い部分が無くハードロック色が強い (前身バンドFLEAの音楽性が引き継がれているのであろう)。
バンド名であるエトナ(エトナ火山から命名)が示すとおり 火山が爆発したような驚異的なインタープレイの連続で、 隙間があればとにかく音が埋め込まれているといった感じである。
手数、音数が多いが、決して雑な作りではない。 良く聴くと構成、曲展開などが1曲ごとに計算され尽くしているのがわかる。
知名度は低いが、この爆発力は一聴に値するでしょう。
ちなみに、フランスのジャズロックシーンにもETNAというバンドが存在 (マグマのベルナルド・パガノッティのベースが唸る、女性ボーカル主体の作品) するので間違えないように気を付けましょう!


・TOPI O UOMINI/FLEA(72)

イタリアン・ジャズ・ロックの名バンドETNAの前身にあたる ハード・ロック・バンドFLEA唯一の作品。
ETNAがハード・ロック的なアプローチを見せる「ジャズ・ロック」とすると、 このFLEAはジャズ・ロック的なアプローチを見せる「ハード・ロック」といえる。
収録曲4曲のうち、短い1曲の数分間以外は押しの一手!で ドラム叩きまくり、ギターかきむしりまくりで休む暇もなく暴れ回っています。 特に1曲目は20分を超える大作でかなり無茶しており手がつけられません!
メンバーは全員同じなのに、出てくる音の印象が違うのにはビックリです。 まあ、激しさ、ドラムの手数の多さ、変拍子、めまぐるしい曲展開などは ETNAと共通しますが...
メイ・ブリッツ、アルマゲドンあたりのドラム叩きまくりのブリティッシュ・ハードや、 ニュー・トロルスのコンチェルト・グロッソ・1のB面に近いサウンドですが、 彼らよりもよりテクニカルな印象を受けます。
ほとんどがギター、ベース、ドラム、歌(ETNAはインストバンドだがFLEAは歌入り) という単純なメンバー構成ながら飽きさせないのはさすがです。 3年後にETNAに変身するわけですが、この間メンバーの間に一体何があったんでしょう? キーボードはほとんど入ってないし、メロウさも無いので シンフォ系のファンよりもハードロックファンにアピールすると思います。
もちろんETNAとセットで聴くのをお薦めします。 聴き比べると時代背景などが浮かび上がって非常に興味深いです。


・DIES IRAE/FORMULA 3(70)

これぞ初期イタリアというべき、情熱的な作品(1st)
時代を感じさせるとても荒削りなサウンドだが 3人の演奏がとても熱い(暑苦しい?)。
とにかくオルガンもギターもドラムも歌も若さにまかせてうなりまくる。
1曲目の「怒りの日」はとてもヘビーな曲だが、 キャッチーな歌ものも入っている。
たとえるならヴァニラ・ファッジ+ジミ・ヘンのようなサウンド?
この後3枚のアルバムを出すが、どんどんおとなしくなってしまうので 個人的には、この作品が断然おすすめです。


・IL GIARDINO DEI SEMPLICI/SAME(75)

落ち葉を敷き詰めたロマンティックなカバーアートが有名な ジャルディーノ・デイ・センプリチの1st。 彼らはいわゆるプログレバンドではなく、 イタリア特有の正統派ラブ・ロックのバンドなのだが、 イ・プーと同系統のサウンドなので、 プログレファンでも十分OKなはずです!
流麗なメロディーの曲が、完璧なハイトーンコーラスをともなって 情熱的に歌い上げられており、 さらに、さりげないストリングスアレンジ、 アコースティック・ギターのはかないアルペジオ (エレキ・ギターのフレーズはあまり綺麗とはいえないが) がより一層作品の良さを高めている。
アルバムジャケット通り、秋に聴くのがおすすめです。
ロマンティックなイタリアの世界にどっぷり浸れます!


・TERRA IN BOCCA/I GIGANTI(71)

イタリアンシンフォニック初期の名盤
60年代中盤からビート・ポップスをやっていたバンドが、何を思ったか、突如大変身を遂げ 多くのゲストととともに作り上げたとてつもないシンフォ大作である。
ビートポップスあがりのせいか、やはり多彩なボーカルが主体となり、 全編にわたり全員がさまざまな彩りの曲を歌いまくっている。
A、B面それぞれ全てを使ったパート1、2を通じて、静動メリハリのある 21の小曲にわかれてはいるが、それらが曲間無しで絶え間なく展開され ラストへ向け盛り上がっていく。息をする暇もない45分強の世界は圧巻である。
71年という早い時期(その分古くささを感じさせる部分も多くあるが)に これだけ完成度の高いアルバムを発表しているところが凄い。
この作品がラストアルバムとなってしまったのが惜しまれる。


・SUN SUPREME/IBIS(74)

NEW TROLLSが分裂していた1973〜75年の間に、NEW TROLLSを名乗れなかった側の3人と 後にNOVA等で活躍するスーパードラマーとで結成された 幻のバンドIBISの1stアルバムでありヘヴィーシンフォの大名盤。
「NEW TROLLSを名乗ることは出来なかったが、音楽性は俺達の方が断然上だ!」 といわんばかりの、崖っぷちに立たされた男達による気合いの入りまくった内容となっており、 分裂してくれてありがとう!という感じです。
圧倒的なヘヴィネスで突き抜けまくる組曲2曲が収録されていますが、 全編通じて、サウンドの核となっているニコの ヘヴィーなギター(特にカッティングが格好良い)と超ハイトーンボーカルが目立ちまくっています。 (イタリアのギタリストで個性として他に匹敵するのは、 FORMULA 3,IL VOLOのアルベルト・ラディウスぐらい?)
躍動感あふれるサウンドの核となっている、 手数の多いフリオ・キリコばりのリック・パーネルのドラミング (長いドラムソロが今となっては少し退屈にも感じますが...) 空間的広がりを演出しているキーボードも魅力的です。
サウンドの深遠な内容をそのまま絵で表現したような白黒のジャケットも大変美しく、 思わずパソコンの壁紙にしたくなります! (ちなみに2ndはメンバーの顔の絵と軟弱な文字のバンド名ロゴが描かれていて格好悪いです。 ...この落差は何?(^^;))
全曲英語で歌われていますが、私には何故かイタリア語っぽく聞こえます。 ニコのボーカルのせいでしょうか?
私は特に1曲目のPart3の中間部で「Do Not Go〜!」と絶叫し、 ヘヴィーなギターが絡みつく静から動への劇的な展開部分が大好きです。 (思わず拳をにぎりしめてしまいます!)


・TARDO PEDE IN MAGIAM VERSUS/JACULA(75)

イタリアの裏名盤!として有名。
個人的に、宗教がかった作品という意味で、 ラッテ・エ・ミエーレの受難劇(後述)を表(神)の名盤としたときの、 対極に位置する裏(悪魔)の名盤だと思う。
何かにとりつかれたかのようなテンションは異常であり、 近年たくさん転がっているブラック/デス系のメタルバンド の悪魔的アプローチなどは子供の遊びのように思えてならない。 (デヴィル・ドールもすごいが、この作品を抜くことは出来ないでしょう。)
自主制作盤だったため、とにかく作品が世に出回っておらず 再発されるまでは全く手が出なかった。
再発前に一度だけ、渋谷の某廃盤専門店で 壁に飾られていたが値段がついていなかったのを強烈に覚えている(売り物じゃなかった?)。
そのためか噂が噂を呼び、再発にとても長い間の時間を要し、発売時期が延々と延びていた頃は、 一時期マニアの間で、お蔵入りならぬ「ヤクラ入りか?!」という言葉まで 流行ったほどである。(当時レコード屋で何度「入荷はいつごろに延びそうですか!?」 と問い合わせたことか...)
無事その後再発されたが、やっとCDを手に入れた時は、 「これ聴いたら呪われて死ぬんじゃないか?」って思ったものである。 なぜなら、この作品を作り上げた主要人物アントニオ・バルトチェッティは 黒ミサ、黒魔術に傾倒しているホンモノ!であり、 その後結成したアントニウス・レックスのアルバム (聴き所は、本作品の曲を再演した2曲だけ、 あきらかにテンションが落ちているのでマニア向け) 制作中に、ドラマーが2人も他界しているからである。
さて、肝心の曲はどんなものかというと、 圧倒的な音圧のパイプオルガンと、 悪霊が乗り移ったような女性ボーカルを主体に 重厚な悪魔的世界が展開されていくものである。
ドラムは入ってません!
必ず夜、電気を消して聴きましょう!


・PASSIO SECUNDUM MATTHEUM/LATTE E MIELE(72)

キリスト教のマタイ受難劇をモチーフとして作られたドラマチックな名盤。
トリオバンドですが豊富できらびやかなキーボード群(メタモルフォシに匹敵!)、 混声合唱団がこの重厚なテーマを鮮やかに表現していきます。
演奏は若干古くさい部分もありますが、広がる精神世界がとてつもなく深淵で美しいです。
とにかく他のコンセプトアルバムとはスケールの大きさが違います。 なんてったって神を題材にしているのだから...
メンバーは当時20そこそこ、しかもドラマーは17才だったらしい。 17でこんなものを作ってしまうなんて...全く宗教パワーは恐ろしいものです。
宗教信仰があまりない日本人には、こんな作品は絶対作れないでしょう。
マーキー32号にこの作品を詳細に研究、解説し より深く理解するすることのできる論文が掲載されているので、 是非一読をお薦めします。 (この論文を読んでから聴くと、作品がいかにすごいかが理解でき、10倍感動できます! ...同様の理由で、キャメルの名作スノーグースを聴くときは小説も必ず読みましょう!)
バンド名のラッテ・エ・ミエーレとは、ミルクとはちみつという意味だそうな... 名前からするとイタリア版バニラ・ファッジってとこでしょうか?
本作品を気に入った人は、2ndのPAPILLONも名盤なのでしっかり押さえましょう。
ちなみにオリジナルメンバーでの74年当時のライブ音源もCD化されています。


・FORSE LE LUCCIOLE NON SI AMANO PIU/LOCANDA DELLE FATE(77)

このアルバムはとにかく1曲目でしょう。
曲の美しさ、展開、メロディどれをとっても完璧で 「シンフォニック・ロック」を極めた、ひとつの完成形といってもいいでしょう。
2曲目からは、基本的に美しい歌ものが続く。
メンバーは、ギター×2、キーボード×2、ボーカル、ベース、ドラム という豪華7人編成ながら、完璧なアンサンブルをみせており、しかも無駄がない。
時代も77年ということもあり、音質のクオリティも高く洗練されている。
そういう意味では、マクソフォーネと似ている部分もあるが、マクソフォーネに比べ こちらの方が展開が少なく、スリルも少なく、全体的にゆったりした流れとなっている。
(個人的には、マクソフォーネの方が断然好き!)
音楽内容とは関係ないが、表ジャケ(ファンタジックな絵)と 内ジャケ(ルックスの悪いメンバーの写真、しかも何故かきらきら光ってる!最悪!)の ギャップがすごい。
もしこれが逆だったら、こんなに売れなかったでしょう(^^)


・OPACITA SCURA LIVE/MASS MEDIA(78?)

イタリア最強のジャズ・ロック・バンド、 アルティ・エ・メスティエリを彷彿とさせる、 幻の超絶技巧バンドによる発掘ライブ音源。
ライブ音源のせいか、アルティよりもエトナよりも明らかに凶暴な パフォーマンスを繰り広げています。
ドラムもベースもシンセもギターも...全メンバーが総攻撃を仕掛けてきます。 ひっきりなしにソロを弾きまくり、がんがんキメ技を連発し、圧倒的なスピードで一気に駆け抜けていき、 やたら「うるさ格好良い」です!
こういうジャズ・ファンから最も敬遠されがちな、 ロック寄りの火花飛び散り系ジャズ・ロックを語る上では 絶対に外せない作品といえるでしょう。
なぜ当時アルバムを残せなかったのか不思議ではありますが、 このライブ音源しか存在しないおかげで、 逆に彼らの凄みがクローズアップされているといえるかもしれません。


・MAXOPHONE/SAME(75)

これぞイタリアンシンフォニックロックの大名盤!
クラシック、ジャズ様々な要素を取り込みつつ めまぐるしく変わるが、無駄のない、流れるような曲展開... とにかく斬新である。
アレンジ、メロディセンスがずば抜けている。 (1975年という、時代がなせる技だろうか?)
洗練されていて、今聴いても全く古さを感じさせない。
とくにA3、B1曲目は大泣き...
歌、ギター、キーボード、管楽器 (定番フルートだけでなく、サックス、クラリネットからトロンボーン、フレンチホルンまで) とにかく全てが泣ける!
英語バージョンも存在するが、 どこか情熱的でないので(歌い慣れてないせい?) 買うなら絶対に本国イタリアバージョンでしょう。
イタリア語の説得力は圧巻!


・INFERNO/METAMORFOSI(73)

とにかくキーボード!という人には絶対おすすめの名盤といえるメタモルフォーシの2nd
1stからギターが抜けてしまっていますが、 その分、メロトロン、オルガン、チェンバロその他 さまざまな鍵盤楽器が常に前面で大活躍し、展開もスリリングです。
そういう意味では「YS/IL BALLETTO DI BRONZO」にも似ているのですが、 鬼気迫るヘビーさや邪悪な雰囲気は一切無く、その変わり美しいメロディや泣きパートが ふんだんに盛り込まれ、情熱的なボーカルがとても耳に残ります。
やっぱりイタリア語は最高!


・ZARATHUSTRA/MUSEO ROSENBACH(73)

哲学者ニーチェの「ツァラトゥストラはかく語りき」にインスパイアされたコンセプトアルバム。
数あるイタリアン・ロック作品の中でもかなり人気が高く、 イタリアン・プログレッシブ・ロック黄金期を代表する1枚。
オルガン、メロトロン、ギターがヘビーで、暗く、重苦しく、熱い (この当時のイタリアのバンドはこの手の熱気ムンムンタイプ多し)世界を展開する。
しかし、このバンドで最もキーになっているのはリズムセクションでしょう。
とにかく強烈で激しいリズムチェンジをこなす。
特にドラムは手数が多く軽快である。
また、ゴブシ系のしゃがれボーカルも良い。 ほんとにイタリア人ってやつは情熱的に歌を歌わせたらかなわない...
ムゼオは残念ながらこの作品しか残しておらず、幻のバンドと言われていたが、 90年代に入って、当時のライブ音源や未発表音源が突然発売された。
ライブは録音状態が悪く、音飛びもあり演奏自体もバランスが悪く、荒削り...
唯一の聴きどころは、フルートやサックスが入って、アルバムとは変わった演奏が 展開されているところでしょう。
また、未発表のほうは、ZARATHUSTRAの別テイクだけでなく
ユーライア・ヒープのLOOK AT YOURSELF(ガンマレイもやってた!)、SHADOWS OF GRIEF
ビートルズのWITH A LITTLE HELP MY FRIENDS(ジョー・コッカーのバージョンに近い)
コロシアムのBRING OUT YOUR DEAD(名作DAUGHTER OF TIMEに収録されたナンバー、 CDには、VALENTYEN SUITEとの表記があるがこれは間違いであろう)
などをやっているが、こちらも録音が悪く、演奏内容も...なので ほんとに超マニア向けである。初心者は手を出さない方が良いでしょう。
(といっても、ムゼオ聴くような人自体、相当マニアという話もあるが...(^^;))


・CONCERTO GROSSO PER 1/NEW TROLLS(71)

60年代後半から現在に渡り激しいメンバーチェンジを繰り返しながら 幅広い音楽的方向性を持ち、数多くの名作を残してきた イタリアを代表するバンドの最高傑作!
イ・プーと並び、本当に息の長いバンドである。
トロルスの歴史の中でも、コンチェルト・グロッソ1、2は特別な作品であり オザンナも関わったことのある(後述)映画音楽家 ルイス・エンリケス・バカロフ指揮の元 オーケストラと競演、壮大なバロック・ワールドを展開している。
レインボー、イングウェイ等のバロック系様式美メタルファンにも 充分アピールできる作品ではないだろうか。
聴きどころはなんといっても、バカロフが関わり、 実際に映画音楽として作られたA面に尽きる。
特にA2のADAGIO(個人的で恐縮だが、この曲をやりたいがために 解散した自分のバンドを復活させたことがある)の美しさ、もの悲しさといったら... 最初に聴いたときには、本当に鳥肌が立った! こんなにも感動的な曲があってよいのだろうか... バイオリンが繊細で今にも壊れそうなはかなげなメロディーを奏で、 ギターソロは思いっきり泣きまくる、 (イングウェイがちょっと前にオーケストラと競演し話題になったが この作品の融合具合と比べたら...、オーケストラをバックに ただ弾きまくれば良いというものじゃない、...まぁ、あれはあれで良いんだけど!) そして、ボーカル、コーラス、ストリングス、ハープシコードが一丸となって 曲をさらに盛り上げる。 (関係ないが、この曲のコード進行は「あずさ2号」とそっくり!、パクられたか?)
コンチェルト・グロッソの2も素晴らしいのだが、 演奏が豪華になり力強く、こなれてきれいにまとまりすぎているためか 1と比べ少し見劣りがする...(といっても、2も絶対聴きましょう!)
その他、古くさいが、フォルムラ・トレの初期に通じる 佳曲ぞろいの歌ものを中心とした1st、2nd
プログレ時代の"UT"、"ATOMIC SYSTEM"
音質は悪いが、演奏内容が濃い"L.I.V.E.N.T." (名前がダサいが、内容は素晴らしい、迫力の「ディスコ組曲」他 コンチェルト・グロッソ1、2から1曲ずつが演奏されている)
突然ソフト・マシーン!になった ジャズ・ロック・ライブ作品作品"TEMPI DISPARI"
など、おすすめ作品は他にもたくさんある。
しかしアルバムによって、やってることがこれだけ異なるバンドも珍しい!


・OPUS AVANTRA/SAME(74)

美しいジャケットがイタリアンロック集成の表紙に採用されていることからも判るとおり イタリアを代表する名盤。
バンド名(AVANTRAはAVANTGARDEとTRADITIONALを足し合わせた造語)通り、 「革新」と「伝統」いう相反する要素が同居し調和しあうことにより生まれた 見事な「作品」が揃っています。
歴史を重んじながらも実験精神に満ちあふれたその独創的な作風は、 ロックという範疇では語ることが出来ないジャンルを超えたものであり、 真の意味でのプログレッシブ・ミュージックといえるものです。 (「オパス・アヴァントラ・ミュージック」と呼んでも良いかも。)
才能の出会いだけでなく時代背景、環境など様々な要素が 奇跡的にタイミング良く重ならないとこれだけの名作は生み出されなかったでしょう。
その昔、JACULA、DICEらと並んでマーキーが再発に努力していたのも十分頷けます。 (当然本作も再発時に即買いした思い出があります!)


・MILANO CALIBRO 9/OSANNA(72)

ヘビー・プログレッシブバンド、オザンナの最高傑作。
このバンドはかなりイタリア臭い(泥臭い!)バンドであり この臭さのせいで好みがはっきりと別れますが、本作品に限って言えば、 オーケストラと競演しているため、クセがあまり無い=かなり聴きやすく、 多くの人におすすめできる作品です。
オザンナを最初に聴くならまずこれでしょう (きっと熱狂的なオザンナファンは、 「オザンナらしさ」の薄いこの作品をベストに持ってこないんだろうなぁ)。
ニュー・トロルスのコンチェルト・グロッソのシリーズでお馴染みの 映画音楽家ルイス・エンリケス・バカロフと組んで作られた 全く同傾向の名作となっています。 (心なしか演奏も歌も当時のニュー・トロルスとそっくり)
アルバムラスト"CANZONA"の歌がとにかく感動的で グロッソ1のADAGIOに匹敵する感動を味わうことができます。


・PARSIFAL/I POOH(73)

結成30年以上の歴史を持つイタリアの巨人、イ・プー (バンド名の由来はくまのプーさん)が残したプログレッシブ・フィールドでの代表作。
基本的には愛をテーマにしたキャッチーでメロディの美しい オーケストラが主体の歌もの路線であり、 バンドとしての各パートの見せ場やテクニカルな展開などはあまり無く、曲も短いので ロックファンにとっては若干軟弱でもの足りないかもしれない。
しかし、オーケストラとの融合した、華麗でロマンチックな世界は イ・プー独自のものであり、是非一度聴いてもらいたい。 (裏ジャケの中世騎士的な衣装には思わず笑ってしまうが)
聴きどころはアルバムラストを飾るタイトル同名曲「パルシファル」 (ワグナーの同名歌劇にインスパイアされた作品)である。 10分間にわたる、イ・プーにしては珍しい、長くドラマチックな曲展開は 見事というしかない。
コンチェルト・グロッソやミラノ・カリブロ・9が好きな人なら 愛聴盤になること間違いないでしょう!
関係ないが、この作品中のある曲(探してみよう!)が タモリ倶楽部の空耳アワーで流れたときはびっくりした。 確か「どんなゲイボーイですか」と聴こえる?というものだったが... うーん...そう言われてみれば確かに聴こえ無くもない!


・PHOTOS OF GHOSTS/PREMIATA FORNERIA MARCONI(73)

ユーロ系バンドの中で、当時オランダのフォーカスと並び世界的に大成功した 通称PFMのプログレッシブ・ロックを代表する超名盤!
演奏能力、曲構成、メロディ全てにおいて文句のつけようがない!満点!
そこそこのプログレファンなら聴いてない訳がなく、 有名すぎるので掲載するのをやめようかと思った程です。
特に本作は他のイギリス5大プログレバンド (クリムゾン、ジェネシス、イエス、ELP、フロイド) の名作群と並べても全くひけを取らない出来となっています。
それもそのはず、このアルバムは世界をターゲットとするために、 本国イタリアで発表した1st、2ndのなかから選ばれた珠玉の名曲を、 元クリムゾンのピート・シンフィールド、 元クリムゾン、ELPのグレッグ・レイクら強力メンバーの協力(^_^;)を得て、 再度磨き直されたものがおさめられているからであり、 歌詞も英語(英訳はピートが行った)なので イタリアらしさがあまり感じられず、とても洗練された作品となっています。
イギリスの変態変拍子プログレバンド、 ジェントル・ジャイアントに大いに影響を受けたというのは 有名な話ですが、彼らに比べると叙情的でロマンティックです。 この辺にイタリアらしさが少しにじみでているといえるでしょう。
本3rdと4thがとくに出来が良いので 聴いたことのない人は、他の作品を聴く前に必ず押さえておきましょう!
なお彼らは近年、再結成ライブを出すなどまだまだ頑張っています。


・QUELLA VECCHIA LOCANDA/SAME(72)

イタリア屈指の幻の叙情派バンドのデビュー盤。
一般的には、格調高い気品が全体に漂い、 ときおり奇跡的な「美」を垣間見ることができる大名盤2ndの方が評価が高いようですが、 ロック色が強く、歌メロが親しみやすく、 アルバム全体にまとまりのあるこのデビュー盤も素晴らしい内容で、 個人的にはこちらのほうが気に入っています。
このバンドの魅力は、哀愁に満ちあふれたメロディと 叙情的なアコースティック楽器の響きにあります。 ヴァイオリン、フルート、ピアノ、アコースティック・ギター...全てが泣きまくります。 (2ndではさらにその傾向が強くなります。)
1st、2ndともどもイタリア叙情シンフォの基本中の基本であり、 絶対に外せない作品といえるでしょう。
特に2ndはアナログ時代にものすごいプレミアがついていたことでも有名ですが、 内容を聴けばそれも納得できてしまいます!


・CONTAMINAZIONE/IL ROVESCIO DELLA MEDAGLIA(74)

このバンド(通称RDM)は、もともとヘビーなギターを主体とした 単なるハードロックを演奏していたが 何を思ったか、この3rdで大変身 突如バッハをテーマとした一大コンセプトアルバムを発表。 それが本作である。
ニュー・トロルス、オザンナでも紹介した バロック野郎ことおなじみルイス・エンリケス・バカロフ指揮の元 コンチェルト・グロッソやミラノ・カリブロ・9と同傾向の オーケストラを導入した壮大なバロックワールドを展開している。
とにかくバッハの有名なメロディが随所にぽんぽん出てくるので、 バロックファンはたまらないでしょう
特にラストの盛り上がりは感動的である。
コンチェルト・グロッソ1と比べると繊細さで少々負けるかもしれないが、 ヘビーなギターとストリングスの絡みは絶妙!


 フランス

・ALPHA RALPHA/SAME(77)

偉大なマスターピースを残した名バンド、タイフォンの 初代キーボーディスト、ジャン・アラン・ガルドが在籍し、 タイフォンの主要メンバー3名がゲスト参加した、 叙情派シンフォ・バンドによる唯一の作品。
PFMのように明快に躍動したり、 マイク・オールドフィールド風にシリアスに迫ったり、 ジャン・リュック・ポンティっぽい ヴァイオリン入りジャズ・ロックをやってみたり... 意外と幅広いスタイルを取り込んでいます (メンバーが目指す方向性がバラバラでバンドが長続きしなかったのかも...)が、 荘厳で深遠な鍵盤類(特にシンセやエレピ)に、 繊細なアコギ、粘り気のあるギター、美しいコーラスが絡み合うパートは タイフォンそのもの...アルバムを聴き終えた頃には 涙が出ている人もいることでしょう。
タイフォンのファンなら押さえている方が多いと思いますが、 万が一押さえていなかったら絶対に入手すべき名盤です。


・TRADITION & RENOUVEAU/ASGARD(78)

フランスの叙情派シンフォニック・フォークの名盤。
ロック色が薄く派手さはないですが、その分温かみのある手作り感覚に満ちており、 アルバムを通じ、 繊細なアコースティック・ギター、ソフトなキーボード、メロウなボーカルらが ゆったりと楽曲を紡いでいきます。
また一音一音の音の響きに対するこだわりが感じられ、 全体が深い森の奥に迷い込んだような幻想的かつ神秘的な雰囲気につつまれています。
フォーク、トラッドを基本とした楽曲をシンフォニックなアレンジで聴かせるという点では、 同国のRIPAILLEあたりに近い音像と言えますが、 メロトロンの導入などとことん泣きの入ったアレンジはこれまた同国のTAI PHONGを彷彿とさせます。
フランス語のささやくようなボーカルはこの優しいサウンドに非常にマッチしています。
アスガール=明日がある!(^^;)というバンド名ながら、 明日がもう2度とやってこないような、 ひっそりとした悲壮感漂うラストは感動的です。
ちなみにこのASGARDという名前を持つバンドはイギリスとドイツとイタリアにも存在します。 間違えないように注意しましょう。


・L'ARAIGNEE-MAL/ATOLL(75)

フランスのイエス!と言われたアトールの2nd 演奏能力、曲構成、アレンジなど、 非常に水準が高く、洗練されている。
その点では、イエスと似ているかもしれないが 実際に聴くと印象はかなり異なっている。
ロックに合いにくいフランス語のせいか? ボーカルがちょっと弱いが、 インストパートがその欠点を見事に補っている。
ときおりヴァイオリンが入ってるせいか 第2期マハビシュヌ・オーケストラみたいな曲もある。
そういえば第2期マハビシュヌのヴァイオリニストのジャン・リュック・ポンティ、 マグマ、スルヤ、ザオ等でおなじみのディディエ・ロックウッド、 などなど、フランスは卓越したその手のヴァイオリニストがたくさんいます。 お国柄でしょうか?


・TROUPEAU BLEU/CORTEX(75)

マグマ、ザオ、トランジット・エクスプレス... 個性派揃いのフレンチ・ジャズ・ロック勢の中でも ひときわ異彩を放つ名バンドのデビュー盤。
プログレ名盤の中には、サイケ、ハード・ロック、 ポップス、AOR、メタル...他ジャンルでも名盤と 称されるボーダーレス的な作品が数多く存在しますが、 本作はレア・グルーヴ〜クラブ・ジャズ系列でも名が知れています。
ラテンやファンクの要素を大胆に取り入れた 独特なジャズ・ロック〜フュージョン・サウンドに、 ふんわり乗っかるフランス語女性ヴォーカル&スキャットが たまらなくクールです。


・DISTANCE BETWEEN DREAMS/DAVID ROSE(77)

フレンチ・ジャズ・ロックの名盤として決して外すことの出来ない作品。
ヴァイオリン奏者のソロ作ながら、あのTRANSIT EXPRESSのメンバーが全面参加しており、 熱気に満ち溢れた素晴らしい演奏が詰め込まれています。
聴き手の鼓膜を突き破らんばかりに暴れまわったり、ふんわりとやさしく包み込んだり、 緩急自在の様々なヴァイオリンプレイを楽しむことが出来るので、 ヴァイオリン好きは必聴・必携といえるでしょう。
残念ながら本人は既に亡くなってしまったそうですが、 本作での躍動感あふれる名演は後世まで語り継がれることでしょう。


・EROS/DUN(81)

フランスの邪悪なジャズ・ロック・バンドによる幻の名盤。
フランスにはマグマの影響を受けた暗黒系、超絶系バンドが 数多く存在しますが、 その中にあって頭3つぐらい飛び抜けた存在であり、 極めて特異な個性を放っています。
酷く悪いものに取りつかれたかのように、 マグマだけでなく、マハビシュヌ、クリムゾン、ザッパ...といった モンスター・バンドを一気に貪り食い、 一心不乱に暴れ狂っているようです。
これほどの名盤が自主制作で作られたのは本当に凄いことだと思いますが、 自主制作だからこそ、バンドのえげつなさをアルバムにそのまま 封じ込めることが出来たようにも思えます。


・LIVE/MAGMA(75)

血管ぶちきれライブ!、こんな演奏あっていいのだろうか?
実際観客もぶちきれて、演奏最後に絶叫しまくってる女の人までいるし...
個人的には、プログレ3大ライブアルバムのうちの一つだと思う
(他の2枚は、EXIT STAGE LEFT/RUSH、PLAYING THE FOOL/GENTLE GIANT)
コバイヤ語という独自の言葉!を操り、暗黒世界(コバイヤワールド!)を次々と展開していく...
このテンションの高さは一体どこからくるのだろう?(全員ドーピング疑惑?!)
クリムゾンの、太陽と戦慄、レッドあたりを好きな人には大推薦。
ヘビー度、テクニック、曲構成、エネルギー、カルト性などを考えれば、 こちらの方が上ではないだろうか?
彼らはこのライブ盤の他にも数多くのスタジオ盤を出しており、 それらの内容はどれも良いのですが、このライブの前には まるで子守歌のようなおとなしい演奏に感じてしまいます。
来日公演でもすさまじいパフォーマンスにより、 マグマが超一流のライブバンドであることを見事に証明してくれました。


・LA CLEF DES SONGES/PENTACLE(75)

ANGEのクリスチャン・デカンがプロデュースしたことでも知られる フランスの叙情派シンフォ・バンドが残した傑作。
同時代のドイツやイタリアの中堅シンフォ・バンドと同様、 多種の鍵盤楽器を中心とした繊細な演奏が続きますが、 切々と歌われる柔らかなフランス語ヴォーカルと、 時折ハード・ロック色を押し出して泣きまくるギターが 本作を特徴づけています。
ジャケットが物語るように、押しは弱めですが ゆったりと紡がれていく音像に、 初期クリムゾンやタイフォンを想起する場面もあります。 日本人好みの内容と言えるでしょう。


・LA VIEILLE QUE L'ON BRULA/RIPAILLE(77)

シンフォニック・ロックとフォークが見事に融合した名盤。
アコースティック楽器による静かで美しいサウンドに、 やさしく包み込むようなシンセが自然と溶け込んでおり、 このバンド独特の音像を生み出すのに成功している。
打楽器があまり出てこないので、聴き始めは地味な印象を受けるかも知れないが、 聴けば聴くほど味わい深く、 まるで美しい音が少しずつ体にしみこんでいくような感じで、 どんどんはまり込んでしまいます。
個人的に、フランス語はアタックが弱すぎてロック向きではないと思っているが、 (フランス語のロックで気に入るものが少ない)、 この優しく儚げなサウンドにとっては、 フランス語の響きがとても良くマッチしていると思います...というより、 フランス語がピッタリです!
フランス語の良さを生かすとしたら、こういう手があるんですね〜


・SANDROSE/SAME(73)

全体的にクールで、ジャズの雰囲気を持った 女性ボーカル+オルガン+ギターのバンド
アフィニティや ジュディ・ドリスコール、ブライアン・オーガー&トリニティ あたりのオルガン&女性ボーカル好きなら絶対買い!!
とくにこのイギリスの2アーティストとほぼ同路線だが、 歌もギターもオルガンも繊細かつ 泣きまくっているところがポイント!
(なってったってメロトロンも入ってるし)
この1作しか出ていないのが、非常に惜しまれる。
フランスはジャズロックというイメージのせいか、 (このような泣きのシンフォニック作品はあまりない)
歌詞が英語のためかフランスらしさは感じられない。


・TAI PHONG/SAME(75)

フランス屈指の、いやプログレ界屈指の 叙情派シンフォニックロックバンド、タイフォンの1st
とにかくドラマティックに泣きまくる。
アルバムを通して聴く度に、感情の高ぶりを押さえきれなくなる... 特にA2、B1のはかなさ、もの悲しさと言ったら...
(発売当時のライナーにおける、伊藤政則氏の興奮度がすごい! 最後に伊藤"タイフーン(当時はそう呼ばれていた)"政則とか書いてるぐらいだから... でもその興奮ぶりも充分頷ける)
主要メンバーの2人(フランス・ベトナム混血)のベトナムの血によるものなのだろうか?
(ちなみに、1人は大木凡人に似てる!?、全く関係ないが(^^)...)
ギターも、キーボードも、ボーカルも素晴らしいが、 なんといってもキーになっているのは、コーラスの美しさに尽きるでしょう。
こういう作品こそ、プログレというジャンルにこだわらず 全ての音楽ファンに聴いてもらいたい。
2ndも1st同様、大名盤!、絶対に買うべし、聴くべし!
CD化に際し、1st、2ndとも、当時のシングル曲が ボーナストラックとして追加(これがまた、アルバム曲に勝るとも劣らない 名曲ぞろい、ボーナスまで泣ける!)されているので、 LPを持っていても持っていなくても、シングルを持ってない人は 絶対にCDを買いましょう!


・TERPANDRE/SAME(80)

マイナーなインスト・シンフォ・バンドTERPANDRE唯一の作品であり、 メロトロン好きなら絶対に避けて通れない究極のメロトロン・アルバム。
フランスお得意のジャズ・ロック、ゆるやかに流れるシンフォ... 同一バンドとは思えないほど明確に異なる2つの顔を使い分けて アルバムが進行していくのですが、そのいたるところに メロトロンが導入されています。
リリカルなピアノ、やさしいシンセ、伸びやかなヴァイオリン... と様々なメロトロン音が絡み合った色とりどりのコンビネーションが 幻想的な音世界を作り出しています。
メロトロンの特性を徹底的に熟知しないと、 ここまでメロトロンを前面に押し出した曲作りは出来ないと思います。
メロトロンという楽器の可能性を極限まで引き出した作品として、 後世に語り継がれることでしょう。


・PRIGLACIT/TRANSIT EXPRESS(75)

フランスにはマグマ・ファミリーの他にも、 数々の素晴らしいジャズ・ロック・バンドが存在しますが、 その中でもこのTRANSIT EXPRESSは最高部類に入るでしょう。
彼らの作品の中では、様々な変化球と直球を織り交ぜ多彩なスタイルのジャズロックを追及した 3rdでありラスト作の「天然色」が最高傑作と言われていますが、 ここではあえて1stを紹介することにします。
確かにこのデビュー盤は、まるでストレートしか投げられない若い剛速球投手が、 直球のスピードだけで勝負をしているかのようで単調かもしれません。 しかしその直球のスピードたるや半端じゃありません。 若さにまかせた切れ味の鋭い演奏が、エネルギッシュな爆発力をともなって 聴き手をがんがんねじ伏せていきます。
いずれにせよどの作品も、初期ARTI E MESTIERI、中後期のICEBERGらと 同列で語られるべきであり、 ポスト・マハビシュヌ系の最右翼といえる高純度の内容を誇っているので、 彼らの全3枚と関連作デヴィッド・ローズのデビュー・ソロはセットで聴いておくべきでしょう。
2年間という短い間を駆け抜けた彼らの一瞬の輝きが 全てのアルバムの全ての楽曲に詰まっています。


 ドイツ

・CAROL OF HARVEST/SAME(78)

ルネッサンスのアニー・ハスラムに似た 美声女性ヴォーカリストを擁する ドイツのプログレ〜フォークの名盤。
英語詞で歌われる素朴で荒涼としたブリティシュ・フォーク的要素と シンセやエレキ・ギターを効果的に導入した 泣きのプログレ要素が融合し、 美しく儚い世界を紡いでいきます。
サウンドからドイツらしさは感じられませんが、 78年にこのような(良い意味で)古めかしい作品を 発表できたのはドイツだからだと思います。 (イギリスだと73年くらいのイメージ!)
当時200枚しかリリースされなかったわけですが、 後にウルトラ・レア・アイテムとなり、 ブートを始め何度も再発を繰り返していることから マニアにとても愛されている作品といえるでしょう。


・HIP ELEGY/JOACHIM KUHN(76)

ドイツの名ジャズ・ピアニスト、ヨアヒム・キューンが 個性豊かなメンバーとの融合により作り上げた ジャズ・ロックの大名盤。
キューンの大胆かつ繊細な鍵盤さばきに、 ムザーンの爆発的な牽引力、カテリーンの冷静さ、 さらには日野皓正のシャープさが混じり合った、 白熱した演奏を存分に楽しめます。
個人的には、時代背景(76年)というのもポイントであり、 これが数年ずれていたら、フリージャズ色が強すぎたり フュージョン色が強すぎたりして、 本作に見られる独特の輝きは得られなかったように思います。


・LIFT/SAME(77)

旧東ドイツを代表するシンフォ名作として古くから知名度の高いLIFTのデビュー盤。
メロトロンをはじめ、シンセ、オルガン、エレピを巧みに操るツイン・キーボード体制、 軽やかなフルート、力強いサックスが特色で、 ゆったりとしたコンパクトな歌ものと、 クラシカルな雰囲気が漂うシンフォものの両タイプの曲が収録されていますが、 いずれも旧西ドイツものとは明らかに色が異なります。 (チェコあたりの東欧シンフォに近い音です。 特に翌78年発表の2nd、MEERESFAHRTではシンセが多用されその傾向が強くなります。) 当時のベルリンの壁がいかに高く険しいものだったかを その音楽性からうかがい知ることが出来るといえるでしょう。
2ndも本作の延長線上にあり大作を収録した佳作ではありますが、 残念ながらメロトロンが使用されていないので、 どちらか迷ったらこの1stから聴くのが良いでしょう。 (それぐらいこの作品におけるメロトロンの役割は重要なのです!)
アメリカにも同名バンドが存在するので間違えないようにしましょう。


・RECYCLED/NEKTAR(75)

69年に結成され、ライブ盤などを含め10枚近い作品を残したドイツの大ベテランバンド、 ネクターの最高傑作
アイアン・メイデンの名ベーシスト、スティーヴ・ハリスが影響を受けたという有名な話のおかげで メタル系のファンにも知名度が高く、ドラマティック・ハードの教科書的な アルバムとなっています。
A・B面それぞれが小曲の集まりによる組曲形式をとっており、 (CD化によってAB面の曲がつながり、大袈裟度がさらにアップ!) 泣きの入った歌メロ(現在のジャーマン・メタルの泣きとは全く異なる)を基本に、 ダイナミックなギター、全編大活躍のシンセ、様々な効果音、 混声合唱!などによりとてつもなくスケールの大きい音世界を作り上げています。
また前衛的でもありB級臭くもあるジャケットがぶっ飛んでいます。 (クスリでもやらないとこんな絵書けないと思う!...(^_^;))
他の作品と比べると、本作のみ突出した出来映え (特にライブ盤はあまりお薦めできない)なので、必ずこの作品から聴きましょう。


・BAROCK/PARZIVAL(73)

イ・プーの名盤を思い出させるドイツのクラシカルな フォーク・ロック・バンドの2nd。
バンドのアイデンティティを示したタイトルのように バロック音楽と70年代前半のロック(フォーク、ポップスを含む)を合体させた スタイルをとっています。
アコースティック楽器を前面に押し出し クラシカルで荘厳な面、のどかで親しみやすい面を披露したかと思いきや ロック・バンドらしい熱くハードな面も持ち合わせていて メリハリが効いています。
特に1曲の中にこれらの要素を凝縮した SCARLET HORSESはなかなかの名曲です。 (中間部は突然コンチェルト・グロッソ1化!... ギター・ソロはニコそのもの!)
1stに続くコニー・プランクのプロデュース (各楽器やSEが立体的に配置されている)も クオリティアップに大きく貢献しているように思います。


・IN ACTION/THE PINK MICE(71)

70年代ドイツを代表するプログレ〜ハード・ロック・バンド、 ルシファーズ・フレンドからジョン・ロートンを除いたメンバー達による、 クラシック名曲をロック・アレンジしたプロジェクトの1st。
最も作風が近いのはオランダのエクセプションですが、 エクセプションに比べシンフォ・ファンには評判のよろしくない管楽器 (←私は大好きですが)が入っておらず、 代わりに強力なギターが入っているので、ロック色が強く格好良いです。 (ハード・ロック色の強い2曲目などはヴァニラ・ファッジを彷彿とさせます。)
高度な演奏能力を誇るルシファーズ・フレンドのメンバーならではの スリリングな展開も多く大いに楽しめます。 古今東西「クラシック名曲のロック・アレンジ」ものは数多く存在しますが、 その中でも間違いなくトップクラスに位置する名作といえます。
2ndは、シンセを前面にフューチャーした内容で、 ハードさが薄まっていますが傑作であることに変わりありません。 ペリー&キングスレイ、ホット・バター、EL&P、冨田勲のように 慣れないシンセをなんとか使いこなそうと奮闘する姿が 音に表れていて微笑ましいです。


・MOVE YOUR ASS IN TIME/REAL AX BAND(77)

フランスのCORTEXと同様、お洒落なセンスの塊のような ジャズ・ロック・バンドによる唯一の作品。
ザッパやGGのようなひねくれ系プログレと、 ラテン、ジャズ、ファンクの要素が絡み合い、 この時代の空気感をまとったグルーヴィーな変則サウンドは唯一無二... 疾走感、躍動感あふれる曲ばかりで中毒性が高いです。
CORTEXとの違いはヴォーカルとギターになります。 こちらもヴォーカリストは女性なのですが、 黒人でありパワフルでホットに歌いあげていきます。 時々サンタナ化する粘っこいギターも気合が入っています。


・REFLECTIONS ON THE FUTURE/TWENTY SIXTY SIX AND THEN(72)

ドイツというより全世界的に見ても70年代オルガン・ハードを代表する究極の一枚。
いわゆるドイツらしさはあまり感じられず、 イギリスの70年代オルガン・ロックの良いところだけを抽出・合成させたような 内容となっています。
例えるなら、 NICE(キース・エマーソン)のテクニック、EGGの実験精神、ATOMIC ROOSTERの凶暴性、 RARE BIRDのツインキーボード・コンビネーション、 STILL LIFEの孤高性、WARHORSEの哀愁を併せ持ったような 凄まじい作品といえるでしょう!
相当高度な力量を持ったメンバー達による力技の連続で、 普通ならソロ部分が長めでだれるところも、 テンションの高さが常に維持されており全く気になりません。
現在再発されているCD(REFLECTIONS!)は、 オリジナル音源の紛失により別テイクとなっているようです。 (実は私もオリジナル盤は未聴(大汗!)) 盤起こしでも良いのでオリジナル音源もCD再発してもらいたいものです。


・COSMIC CENTURY/WALLENSTEIN(73)

初期ジャーマン・シンフォニックロックの名作。
副題に"THE SYMPHONIC ROCK ORCHESTRA"とありますが まさにそのまんまの作品!
演奏は下手だし、音も古くさいのですが、 音楽にかける情熱はひしひしと伝わってきます。
ピアノを中心とし、ヴァイオリン、ギター、オルガンなどの楽器群が絡み合いながら、 ひとつのテーマに向けて曲を盛り上げ、 クラシカルな世界を次々と展開していく姿がこよなく美しいです!
特にA面の3曲は切れ目なく流れるように演奏されているため、 まるで21分の超大作のようです!
(あまり関係ないですが、A2のピアノはどことなくジョージ・ウインストン →  クイーン(オペラ座の夜の出だし!)を連想しました。)
この作品だけ出来が突出しているので、他の作品は、 本作をやたら気に入った人にだけにお薦めしたいと思います。


・MORNING/WIND(72)

なにがなんでもメロトロン!という人にぴったしの1枚
基本的に、アコースティック楽器を多用した、牧歌的でおとなしめの曲が多いのですが、 ひとたびメロトロンが出てくるとここぞとばかりに大活躍し泣きまくります。
最大の武器であるメロトロンの使い方はとにかく絶妙です。 A1、A3などでは残響系のエフェクトをかけており 壮大に広がっていくその音像は、イギリスのケストレルを彷彿とさせます。
(曲調がどこかビートルズっぽいところも、そう思わせる要因の一つかも...)
ボーカルの声質が、ピーター・ガブリエルに似ているのもポイントが高いです。
また、ジャケットにはいかにも中世ヨーロッパといった感じの 子供たちの絵が描かれていてメルヘンチックな雰囲気を醸し出し アルバムの印象をより味わい深いものにしています。


 スペイン

・CICLOS/CANARIOS(74)

バロックの名曲であるヴィヴァルディの四季を元に 独自のアレンジの、シンフォニックワールドを展開する スペインを代表する1枚。
作品全てを、クラシック1曲にこだわって 作られたアルバムは、この作品か EL&Pの展覧会の絵ぐらいしか見あたらない...
(しかも、この作品のすごいところは  2枚組(春夏秋冬=ABCD面)というところでしょう)
聴いたことのあるフレーズがぽんぽん飛び出し強引に押しまくります。
まぁ、バンド名が「かなり押す!」(-_-)...ってぐらいだからしょうがないか...


・SI TODO HICIERA/CRACK(79)

スペインの極上メロディアス・シンフォとして名高い作品。
のっけからロカンダ・デッレ・ファーテの1曲目(超名曲)を髣髴とさせ、 小刻みなリズムの上をピアノ、ギター、フルートがせわしなく飛び交ったかと思いきや、 ゆったりと情感豊かに泣きまくるといったダイナミックな展開を繰り広げます。
その後も、シンセやメロトロンを多用したり、女性ボーカルを導入したり、 タイフォンあたりに通じる泣きパートがあったりと、 シンフォの王道ぶりを見せつけていきます。
ボーカルの歌いまわしやメロディの随所にスペイン色が にじみ出ていますが、他のスペインものほど強くなくアレンジが基本的に洗練されているので、 スペインの泥臭さが苦手な方でも問題なく受け入れることができるでしょう。 (むしろ良いアクセントになっていると思います。)
ジャケはどことなくトリアンヴィラートっぽいですね!


・ESCENES/GOTIC(78)

感動的な楽曲、躍動感あふれる演奏、美しいジャケット...と全く欠点が見当たらない スペインのシンフォニックロックの頂点。
フルート入りのため同国同時期のCRACKにやや似ている面もありますが、 そもそもスペインらしさの少ないCRACKをさらにあく抜きして土臭さを完全に取り除いたような感じです。 インストバンドでありスペイン語のボーカルが入っていないためなおさらそう感じるのかもしれませんが、 清らかですがすがしくスペインらしさは微塵も感じられません。
インストものシンフォとしてはスペインのみならず 世界最高峰レベルの名盤といっても過言ではないでしょう。
昔から「スペインのキャメル」というコピーで紹介されることが多いのですが、 彼らの奥深い音楽性は、そんな単純な言葉では決して語り尽くすことは出来ません。
残念ながら彼らはこの1枚しか作品を残すことができませんでしたが、 本作に才能の全てを出し尽くしているような気がします。


・ARC-EN-CIEL/ICEBERG(78)

スペインの強力なジャズ・ロック・グループである イセベルグのラスト作。
1stはシンフォニック色が強くボーカル入りだが、 ボーカル部分がインストパートに比べてテンションが低く、 曲作りにも甘さがみられ(フィンチの捨て曲のようなイメージの曲もある...) バンドの良さが十分に発揮されずに終わっているが、 以降は作品を出すごとにジャズ・ロック/フュージョン色を強め、 インスト作品に的を絞りこむことにより、 彼らの持ち味をフルに発揮した 質の高い素晴らしい作品を次々と発表する。 特に3rdのSENTIMENTSはジャズ・ロック的な作風では最高傑作といえるが、 本作(5th)ではさらにラテン色、フュージョン色を強めた 充実した内容となっており、 バンドとしての最終到達点であり最高傑作だと思う。
疾走する軽快なリズム隊の上を、 超絶的な速弾きギターとキーボードが暴れ回る様は痛快である。
マハビシュヌ・オーケストラにも例えられるが、 ラテンのノリが強いので、どちらかというとロック色の最も濃かった時期のRTFっぽい。 (そういえばRTFはスペインって曲があったっけ!)
型にはまったネオクラシカル系とは対極をなす、 ジャズ&フラメンコ系速弾きは自由奔放で気持ちがよい。 どちらかというと彼らはアコースティック系の演奏で持ち味が発揮されるように思う。
情熱的でエキゾチックなノリはスペインならではのものでしょう。 独特なノリに思わず体がリズムを刻んでしまいます。 ギタリストのソロであるMAXのBABELも本作と同傾向の素晴らしい作品です。


・CUENTOS DE AYER Y DE HOY/NU(79)

スペインの艶かしく邪悪極まりないヘヴィー・シンフォの名盤。
メンバー全員のパッションはすさまじいものがあり、 通常のバンド編成に、ヴァイオリン、フルート、ハーモニカ、メロトロン等を織り交ぜて 容赦なく一気に襲いかかってきます!
この手のサウンドを得意とするイタリアもののコントラストを、 さらにどぎつくした感じであり、インパクト勝負ならスペイン最強といえるでしょう。
プログレとハード・ロックが融合してはいますが、 いわゆるプログレ・ハードとして括られるような音を完全に逸脱しています。
個人的にはGOTICの対極に位置する作品だと思っています。


・TARANTULA/SAME(77)

スペインの色彩豊かなシンフォ・バンドによるデビュー作。
イタリアらしさを感じることが多いスペインのシンフォ作の中でも、 本作は特にイタリア色が強い作風で、イタリアもの好きの日本人にとっては 外せない一品となっています。
シンセ、メロトロン、オルガン、ピアノ...と多種多様な鍵盤群、 荒々しいエレキ・ギター、シャープなリズム隊、オペラティックなボーカル、 スペインらしさを主張するアコースティック・ギター ...これらが混然一体となり、 感動的な1曲目からせわしないラストまで一気に駆け抜けていくさまには 心が熱くなります。
クラシカル・シンフォとハード・ロックがうまく噛み合わさった好例といえるでしょう。


 ポルトガル

・10000 ANOS DEPOIS ENTRE VENUS E MARTE/JOSE CID(78)

ポルトガルを代表するポップス系アーティストが、 プログレッシブなアプローチのもとに作り上げた一大コンセプト・アルバムであり ドラマティック・シンフォの大名盤。
本来はポップス系のアーティスト/バンドが、 時代の流れを受け、突然プログレッシブ〜シンフォ化して名盤を残すという現象は、 70年代前半のイタリアと酷似しているのですが、 それもあってか本作もイタリアのシンフォ名作群に非常に近い色合いを持っており、 歌を基本にしつつ、時に情熱的に、時に幻想的に、時に押しまくり、時に泣きまくる 壮大でドラマティックな内容となっています。
中でも、まるでジャケットのごとく無限に広がる宇宙に向け、 ピアノ、シンセ、ギター、ヴォーカル(シャウト)がお互い呼応しながら 延々とのぼり詰めていくような3曲目とエンディングはあまりにも感動的です。
アルバム全体に漂う強烈なオーラのおかげで、演奏のぎこちなさは全く気になりません。
シンフォ・ファン、中でもイタリアン・シンフォ・ファンなら絶対に聴いて涙を流しておきましょう!


・ASCENCAO E QUEDA/PETRUS CASTRUS(78)

ポルトガルのシンフォ・バンドによる一大傑作。
細かく変化し続ける曲展開と、 荘厳でリリカルなピアノを軸とした演奏の上を 力強いボーカルが情熱的に歌い上げるスタイルは、 ジガンティの名盤TERRA IN BOCCAを連想させます (ソフトな音色のギターがメインとなる箇所は スペインのクラック風だったりします)。
1978年という時代からするとやや古さを感じる音ですが、 ちょうどイタリアン・シンフォの全盛期に通じる熱さを持っているといえます。
幾度も劇的に盛り上がりをみせる見事な展開の連続は、 イタリアをはじめとする叙情シンフォ・ファンの心を掴んで離さないことでしょう。


 オランダ

・SOUNDS OF PASSION/CODA(86)

イエスやジェネシスが違う形でブレイクしていた プログレ氷河期の真っ只中に、ひっそりとオランダで産み落とされていた ドラマティック・シンフォ究極の神盤。
メロディ、楽曲、演奏、歌唱、曲構成、そして効果的すぎるSE... あらゆる要素が信じがたいレベルに到達し何度も奇跡を起こしていきます。
アルバムに収録されている全ての音に意味があり、無駄は一切ありません。 「完璧なシンフォ」を表すのにこれほど適した作品は無いでしょう。
メンバーはこれだけの作品を制作するために、 きっと多くのものを犠牲にしたに違いありません。
感動に飢えている人は絶対に聴いてください。 (この作品を聴いて何も感じないシンフォファンっているのかなぁ...)


・CRYPTO/SAME(74)

オランダの短命ジャズ・ロック・バンドによる唯一作。
この時代のオランダものを象徴するような典型的なサウンドで、 親しみやすく耳に残るメロディが次々と現れます。
メンバー全員が相当な実力者であり、 緊迫と緩和を繰り返しながら卓越した演奏を続けていきます。
近いのは同国のSCOPE、隣国のABRAXISですね (フルートを抜いてポップにした感じ)
基本は、クロスオーヴァー期のジェフ・ベック、 マハビシュヌ、RTFあたりをオランダ風に料理した感じで さほど深みが無いように思えますが、 ファンクやAORの要素も取り込んでいるのでカラフルです。


・TO THE WORLD OF THE FUTURE/EARTH & FIRE(75)

オランダらしい、いかにも日本人受けする憂いを帯びたメロディと、 ケーツ兄弟による泣きのギター&キーボード(特にメロトロン)、 ジャーネイ・カーグマンの女性ボーカルなど、 プログレ&シンフォ的要素が満載のバンドの4thアルバム。
一般的に彼らは、 2ndのSONG OF THE MARCHING CHILDREN(アムステルダムの少年兵)、 3rdのATLANTISが2大名盤と言われていますが、 個人的には本アルバムが最高傑作だと思っています。
確かにこの4thには2ndや3rdのようなアルバム半分を使った大曲は無いですし、 70年代初頭の時代を感じさせる繊細な雰囲気は多少失われたかも知れませんが、 その分音が分厚く力強くなり、カーグマンのボーカルをはじめ 各メンバーの技術や表現力が格段に増し、引き出しも多く色合い豊かな 素晴らしい作品に仕上がっています。 特に時代を反映してか、キーボード面でのアレンジがより豪華になっています。 (メロトロンの嵐は相変わらずです!)
メンバーはエピタフや宮殿が大好きに違いないでしょう... それっぽいアレンジやコード進行が随所に現れています。 特にラストを飾る名曲CIRCUSは完全に宮殿終わりしてます!
#これだけやって知らないとは言わせ無いぞ!(^^;)
このバンドは、その時代の流行を敏感に反映するのも特色であり、 1stでは歌メロの覚えやすいダッチ・ポップ、 5thではちょっとファンクな歌謡曲をやっています。 いずれにせよメロディは良いので、どちらも2nd〜4thが気に入られた方なら 聴いてみても損はないと思います。


・GLORY OF THE INNER FORCE/FINCH(75)

ジャズ、フュージョンに影響を受けた激しいソロバトル、複雑な独特のリフ、 起承転結のある曲構成、どこか哀愁漂うメロディなどがちょうど良い具合にミックスされた オールインストものバンドの1st
ギターのヨープ・ヴァン・ニムヴェーゲン(覚えにくい!)が大活躍、 縦横無尽にとことん弾きまくっています。
このエネルギーは一体どこから来るのでしょう? (スタイル、フレーズ、音質が同国オランダを代表するバンド、 「フォーカス」のヤン・アッカーマンに似ています。特に早弾き時のピキピキ、カリカリした音!)
弾きまくるその様は、楽器こそ違いますが アルティ・エ・メスティエリのフリオ・キリコのドラミング並に強烈かつ壮快です!
インストものなのに聴き手を全く飽きさせることが無いのは、 曲展開が豊かなこともありますが、 ギターがそこいらのバンドのボーカル以上に、饒舌に歌っているところによるものでしょう。
1st〜3rdどれも素晴らしい作品ですが、 3rdはバンドメンバーの演奏に統一感が出てアレンジが洗練された分、 ギターが控えめで野性味が失われてしまっています。 (実はこれが解散の原因?)
曲の随所に出てくる、キーボードとギターのハモリがとても印象的であり、 泣きのメロディも覚えやすいです。(日本人はこの手のハモリに弱い!)
最初に聴くのであれば、CD化に際しボーナストラックとして名曲"COLOSUS"が入った1stをおすすめします。


・MOVING WAVES/FOCUS(71)

ヨーデル!が印象的な大ヒット曲「悪魔の呪文」で始まる 世界的に成功したオランダNo.1バンド、フォーカスの最高傑作(2nd)
クラシック、ジャズの要素を取り入れ、 荒削りながらも、既に完成されたフォーカス独自の世界を確立しています。
A面は、アドリブ満載のハードな曲、叙情的な曲、クラシカルでおとなしい小曲、テクニカルな曲 などバラエティ豊かな曲が並んでおり、 B面にはA面で述べたような要素が網羅され、 フォーカスの魅力が全て凝縮されているような大作がおさめられています。
ヤン・アッカーマンのアドリブセンスは時代の先の先を行っているような感じです。
彼らはこの後もメンバーを変えながらも、 HAMBURGER CONCERTOなどの傑作を作り続けていきます。


・ORION/PANTHEON(72)

フォーカスに類似した音楽性で知られているマイナーバンド唯一の名盤。
確かに世界的に成功したフォーカスからの影響は大きく、 アルバムの随所でフォーカスらしさを発見できますが、 さすがにヨーデルと超絶ギターまではコピーしていません!
さらにフルートやサックスが全編に渡って大活躍しているため、 ソリューションやスーパーシスター、 冴え渡るオルガンとブラスの絡みからエクセプション ...といった様々なオランダの名バンドを連想させてくれます。
曲展開がめまぐるしく変化しながら いつのまにか聴き手にメロディを覚えこませてしまうところは まさにオランダの真骨頂といえるでしょう。 いずれにせよ「フォーカスのコピー」という簡単な言葉だけで切り捨てるような 存在では決してありません!
なおCDの7曲目にボーナス収録された曲名と、 当時の曲名(シングルB面)とでタイトル(あえて書きません!)が 微妙に異なるのですが、どうやらこれは発売当時あまりに露骨だと判断され 変更されてしまったようです。(変更してもバレバレなんですけどね!)


・SCOPE I/SCOPE(74)

オランダのテクニカル・ジャズ・ロック・バンドによるデビュー作。
オランダはメロディ重視のシンフォ、テクニック重視のジャズ・ロックの 両ジャンルで独自の発展を遂げていますが、 このバンドは後者を象徴するような存在と言えます。
オランダで最も成功を収めたフォーカス (スコープってバンド名からしてソレっぽい!)らしさもありながら、 初期マハビシュヌ・オーケストラ、後期ソフト・マシンのような部分もある、 ジャズ色強めの硬派な内容となっています。
全メンバーの演奏力が極めて高い上に、 能力を出し惜しみせず派手に弾きまくり、 激しいせめぎ合いを続けるため、 全編インストながら緊張感が持続し退屈しません。
特に、疾走時に制御不能モードに突入したような ドラムの手数には圧倒されまくりです。
洗練度が向上した2ndも名盤です。


・TRACE/SAME(74)

NICE,EL&Pファン必携の名盤!
クラシックの名曲をロック調にアレンジし、とにかく弾きまくるキーボード・トリオの1st。
アルバムの最初から最後まで、弾きすぎじゃないか?と思えるくらい弾き倒している キーボードのリック・ヴァン・ダー・リンデンの超絶テクニックはすさまじく、 同スタイルのキース・エマーソンに全くひけをとらない。
難解なプレイも、アドリブも、きらびやかな音色も全てが冴えまくっている。
アルティ・エ・メスティエリのフリオ・キリコや フィンチのヨープ・ヴァン・ニムヴェーゲンと 組ませたらどんなことになるんだろうか? きっとバンドにならないんだろう...
リックがトレース以前にいたバンドであるエクセプションも 有名なクラシック曲をロックアレンジして聴かせるというバンド (リックはこの手法がとことん好きなんでしょう)であるが、 オリジナルアルバムではパッとしない曲も多いので、 CD化されたGREATEST HITS(16曲全てがクラシックのスタンダード、名盤!)だけ 押さえておけばよいでしょう
余談だが、B1を聴く度に、 キャロル・キングのつづれおりのA1を思い出してしまう...似てる!...


 ベルギー

・ABRAXIS/SAME(77)

ベルギーのジャズ・ロック・バンドによる手に汗握るスリリングな名盤。
70年代後半のシーンの盛り上がりを象徴するような、 いかにもな内容ですが、 COS、WATERLOO等の名バンドで活躍するメンバーが 集まっているだけあって どのようなスタイルの楽曲も聴きごたえ満載の名演となっています。
マハビシュヌやRTFのようなクロスオーヴァー、 クールで理知的なカンタベリー系、 フォーカスやソリューションのようなオランダ系 ...いろんなジャズ・ロックの旨味が一枚に凝縮された お得な作品とも言えるでしょう。
フルートの活躍場面がかなり多いので、 フルート好きの方は必ず押さえておきましょう。
ピアノもドラムもギターももちろん良いです。


・DAWN DANCER/FLYTE(79)

ボーカル、キーボード×2、ギター、ドラム、ベース、パーカッションという豪華7人編成による、 ベルギー最強のシンフォバンド、フライトが残した傑作。
サウンドは徹底的に泣きにこだわったメロディによるゆったりした部分と パーカッシブで軽快に疾走する部分との両方を併せ持っています。
ツイン・キーボードによる重厚できらびやかな演奏も良いが、 主役はハイポジションで情感豊かに泣きまくるギターでしょう。
いかにもなジャケットもポイントが高いが、欠点はボーカル... メロディライン通りに歌おうとしないし、くせがやたら強いし、 美しさを1人でぶち壊しにかかっている!
全体的な印象は、CAMELやKAIPAに近いが、 オランダのKAYAKやTAURASっぽい人なつっこさも感じられるのは、 ベルギーという国がオランダに近いせいでしょうか?
1曲目の1音目からメロトロン全開!なので、 メロトロン好きの方にもおすすめ。 日本人が聴かずに誰が聴く!といった感じです。


 ノルウェー

・JANUS/AUNT MARY(73)

2匹の生き物?(ヤヌス神?)が向かい合った横顔の絵が、 1匹?の正面を向いた顔にも見えるという 風変わりなだまし絵ジャケットが印象的なノルウェイの4人組バンドの最高傑作。
CD再発盤はヴァーティゴから出ているが(原盤はフィリップス) 内容はまさにあのヴァーティゴを連想させるような、 イギリス70年代初期の古き良き時代を感じさせる、 どこかマイナーなオルガン主体のロックとなっている。
オルガンとアコースティックギターを軸に、 ハードで起伏の多い曲を演奏しているので、 クレシダがハード&プログレ化したようでこの手のファンにはたまらないものがあるが、 ビートルズのようなメロディ、アレンジセンスを持ち合わせており 曲が覚えやすいのも魅力である。
ただ2曲目のMR.KAYEが、ビートルズのBEING FOR THE BENEFIT OF MR.KITE!にどことなく似ている (タイトルからしてまんま!)のはまだしも、 ラスト曲の印象的なギターアルペジオはどう考えてもクリムゾンのエピタフを パクったとしか思えません。 ノルウェイなら気付かれまい!と思ったかどうかはさておき、 他の部分で十分にオリジナリティが感じられるので、 この辺は目をつぶってあげましょう!(^^;)
70年初期のブリティッシュB級マニア、オルガンロック好きは要チェックでしょう。


・HARDT MOT HARDT/HOST(76)

ノルウェーというより北欧を代表するプログレ・ハードの大傑作。
メンバー全員が、相当高度な演奏技術(特にドラマーが凄い!)を持っており、 激しいバトルを延々と繰り広げていきます。
また各人の演奏にはそれぞれクセがあるので、 細かいフレーズの一つ一つが耳に残ります。
メロディの甘さが控えめなのも二重丸!... おかげでこのバンドの最大の武器である、 演奏のシャープな切れ味、カッチカチなソリッド感、 アグレッシブな疾走感が一層クローズアップされています。
後に、一部のメンバーがあのKERRS PINKに加入... ってスタイル比べると違和感ありすぎです!(笑)


・KERRS PINK/SAME(80)

北欧叙情派シンフォの真打ち的存在といえるケルス・ピンクの デビュー盤にして代表作。
ベンチャーズ風のエレキなインスト曲には、 苦笑いするファンも多いかと思いますが、 キャメルに北欧トラッド色を融合し、 「泣き」の部分だけを徹底的に増幅させたような美旋律を ツイン・ギターがハモりまくる展開に、 大抵のシンフォファン(特に日本人!)は感動を禁じ得ないでしょう。
この手のメロディ偏重タイプのバンドは、大抵演奏面に弱みを抱えていますが、 このバンドはテクニックが非常に安定しているので、 安心して哀愁のメロディに身も心も委ねることが出来ます。
そうして何度かアルバムをリピートしているうち、 いつしかエレキなインスト曲を自然に受け入れている自分に気付くことと思います。


・WORLD OF DREAMS/OLE GUNNAR NILSSEN(76)

ノルウェーのギタリストによるプログレ志向の ソロ・デビュー作。
演奏も構成も楽曲も本格的... 知名度の低さに比べてやたらクオリティが高いです。
アルバム全体にはイギリス風のジェントルで気品に満ちた空気が流れ、 ジャズやフォークの取り入れ方、 のどかでポップな歌メロ、線の細いヴォーカル、 オルガンの使い方とエフェクト処理、フルートやサックスの絡みなどなど、 キャラヴァンとの類似点が多いです。
ちなみに、本作発表後にソラリスという、いかにもそれっぽいバンドを 結成しますが、プログレファンには プログレ度の高い本作を先に押さえることをおすすめします。 (スプートニクスとか好きな方はソラリスからどうぞ!)


 スウェーデン

・BLA VARDAG/ATLAS(79)

ツイン・キーボードを擁する5人組シンフォ・バンドの名作。
キャメルやジェネシスのシンフォニックなインスト・パートを抽出し 北欧風に料理した透明感あふれる伸びやかなそのサウンドは KAIPAやDICEに酷似しています。
あえて彼らとの違いをあげるとすれば、 ATLASは全編インストでジャズ・ロック的な感覚も持ち合わせており、 展開が流麗でアレンジが洗練されているということでしょう。 (その分インパクト面は若干弱めといえます(^^;))
ボーカルが入っていなくとも全員一丸となって様々な場面を作り出し、 決して飽きさせない音楽性はスペインのGOTICあたりにも通じます。
再発CDにはボーナス曲が3曲収録されているのですが、 どの曲も本編に引けを取らないのがまた素晴らしいです。 中でも後続バンドMOSAIKによる曲の出来が際立っているので、 このMOSAIKのアルバム音源もどうにか再発して欲しいものです。


・BLAKULLA/SAME(75)

同国スウェーデンシンフォの象徴ともいえるカイパと同じ75年にデビューしながら、 1枚しかアルバムを残せずに消滅してしまったバンドの傑作。
基本的に、カイパ、ダイス、アトラス...といった他のスウェーデンの名シンフォ・バンドと 類似した音楽性ですが、彼らのスタイルはかなりハードです。
メジャーバンドで例えるなら、 ジェネシスの影響を最も強く感じさせることの多いスウェーデンのシンフォ群にあって、 彼らは初期イエス(3rdの頃)を想起させるような突進力を持っています。
またフレーズだけで無く、オルガン、ギター、ベースの音色も荒々しいです。
奥に引き篭もったような作風の多い北欧シンフォ作品群の中では異色ともいえるこの攻撃性こそが 彼らの最大の魅力といえるでしょう。
スリリングな展開はシンフォ・ファンだけでなく ハード・ロック・ファンにもアピールすることでしょう。 ボーカルは母国語です。


・DICE/SAME(78)

ダイスの転がる音から始まる印象的な出だしから、 一気に高水準のジェネシスタイプの演奏で畳み込んでくる スウェーデンNo1シンフォニックバンドの1st。もちろん大名盤!
曲はバンド名通りダイスが転がるように、コードが次々とめまぐるしく変化し、 曲展開もコロコロと変わっていきます、が、そんな変化を感じさせず、 流れるように、彩り豊かなきらびやかな演奏が進んでいきます。
特にB面の20分を越える大作は圧巻!
キーボードが大活躍しており、さまざまな楽器を効果的に使い分けているのですが、 ギターもフィンチよりもカリカリした独特の 高音を強調した音質でひきまくり、時には スティーブ・ハケットばりの泣きのフレーズが出てきます。
この作品は当時自主制作だったということですが....発掘した人は偉すぎます!
CD再発当時、限定プレスのためすぐ売り切れになったのを覚えています。
2ndやライブも発売されましたが、聴くなら絶対に1st! ボーカルが弱めですがそんなことは関係ありません! ダイスの魅力が全てつまっているのはこの作品だけです。


・ENERGY/SAME(74)

メロディアス・シンフォ大国スウェーデンにあっては珍しい、 ゴリゴリのジャズ・ロック・バンドが残した名盤。
マハビシュヌ・オーケストラの影響を感じさせるバンドは、 世界中に数多く存在しますが、近似度では最右翼に位置するバンドといえます。
第1期マハビシュヌ・オーケストラから ヴァイオリンを抜き、パーカッションを強化したような 熱く激しいバトルを存分に楽しめます。
とはいえアルバムを聴きこむと、 単なるマハビシュヌ・フォロワーではなく、 時折、キーボードがチック・コリアっぽくなったり、 ディキシー・ドレッグス風のアメリカンなアプローチが出てきたりと、 聴きどころの多さに気付くことが出来るでしょう。
イセベルグ、トランジット・エクスプレス、エトナ、フェルマータ...あたりが好きなら 耳にしておくべき一品です。


・INGET NYTT UNDER SOLEN/KAIPA(76)

キャメルの叙情性と、ジェネシスの構築性を合わせ持ったような 同国のダイス、オーストラリアのセバスチャン・ハーディーと同傾向の スウェーデンを代表する叙情シンフォニックバンドの2nd。
ロイネ・ストルトの甘美なギター、 ハンス・ルンディンの豊富な音色のキーボードを中心とした 各メンバーの演奏技術が安定しており 楽曲のクオリティも高水準...と安心して聴ける1枚です。
1st〜3rdどれも甲乙つけがたい名作なのですが、 本2ndでは20分を越える大作に挑戦し、 壮大な宇宙的世界を作り上げるのに成功しています。
ロイネ・ストルトは現在、 フラワー・キングス(直訳すると花王?!)を率いて、 他のプログレ系アーティストが堕落していく中、孤軍奮闘中!
カイパ時代と比べ、テンションが落ちるどころか さらに磨きのかかったシンフォニック作品を続々と産み出し、 現代プログレッシブ界の救世主となっています。
どの作品も高水準であるが、特に"STARDUST WE ARE"は必聴です。


・LIFE/SAME(70) 

スウェーデンのプログレ〜ハード・ロック・トリオによる唯一作。
時代背景もあり、ポップス、アート・ロック、ブルース、ハード・ロック、プログレが わかりやすい形で混在しています。
お手本となっているのはイギリスのロック・シーンであり、 ビートルズ、プロコル・ハルム、クリムゾン、フロイド、メイ・ブリッツ等々 様々なバンドが頭に浮かびます。
美しいオーケストラ・アレンジや豊富なアイデアのおかげで、 とてもトリオとは思えないほどカラフルで奥深いです。
1970年という早い時代にイギリス以外の国で、 ここまで本格的な王道プログレ名盤が作られていたなんて、 音楽大国スウェーデンならではですね。
OPETHのMIKAEL AKERFELDTに 多大な影響を与えたことで知られています。 (NEKTARのRECYCLED的エピソード!)


・RAG I RYGGEN/SAME(75)

スウェーデンのオルガン入りハード・ロック・バンドの唯一作。
ジャケットのイメージから、いかにもな北欧シンフォかと思いきや、 透明感も整合性も無い、古めかしくラウドに押しまくる 渾身のハード・ロック作品となっています。
根底はオーソドックスなブルーズ色の強いハード・ロックなんですが、 サイケ、プログレ要素も盛り込んでいて面白味があります。
オルガンとワウ&ファズ・ギターの粘っこい絡みは、 70年代ヴァーティゴ等のB級オルガン・ハード好きをなら たまらないでしょう。フルートも良い味を出しています。


 フィンランド

・TABULA RASA/SAME(75)

フィンランドの叙情派シンフォバンドのデビュー盤。
シンフォといっても派手ではなく、スリルとは無縁の、 素朴でおとなしめの演奏が繰り広げられています。
透き通るように透明なアコースティックギター、 冷たく静かな感触のフルートの音色は神秘的で、 まるで森の奥で聴いているような気分にさせてくれます。
時代を考えると、かなり古臭い音なのですが、 その分逆に懐かしさ、親しみやすさ(この辺はKAYAKあたりに似ている)を感じます。 ある意味KAIPAよりもDICEよりTRIBUTEよりも北欧らしいバンドでしょう。
2ndはフルートが抜け、キーボードが加入するなど 大幅なメンバーチェンジが行われていますが、 おもに曲を書いているギタリストがそのまま在籍しているので 彼ら独特の美しさは全く失われず、こちらも素晴らしい内容となっています。
でも、もしフルートが残っていたらもっと内容良かったんだろうなぁ!
余談ですが、レコード会社である「LOVE」のロゴマークのセンスはかなり良いです。


 アイスランド

・HRISLAN OG STRAUMURINN/EIK(77)

アイスランドのシンフォを聴く上で真っ先に押さえるべき名盤。
とにかくアルバムタイトル曲でもある1曲目の出来が出色.. テクニカルでソリッドな演奏、美しいコーラス、 耳に残るメロディ、目まぐるしく変化する曲展開... イエスやキャメルのエッセンスを北欧らしい透明感で包み込んだ、 特別な名曲となっています。
バンドの魅力が凝縮された1曲目のおかげで 目立ちにくいものの、この後も、GGやザッパ風の展開が出てきたり、 フュージョン化したり、ハード・ロック化したり、 心温まる歌ものになったりと、 いろいろなタイプの楽曲が続いていくので最後まで楽しめます。
離れた島国のおかげで、多種多様なスタイルを フラットにとらえることができたから、 音楽性の豊かさにつながったのだと思います。


 スイス

・PICTURES/ISLAND(77)

ELPの「恐怖の頭脳改革」のガイコツジャケットで有名な H.R.ギーガーのインパクトあるカバーアートが目を引く スイスの変態変拍子構築美バンド!が残した唯一の作品。
精密機械で有名なお国柄を反映してか、 とにかく変拍子、複雑な曲構成が持ち味であり、 フランク・ザッパやジェントル・ジャイアントと並んで (もちろん彼らとはまた違ったタイプであるが)、 この手のジャンルでは頂点に位置する作品のうちの1つである。
彼らはキーボードのピーター・シェラーを中心とする4人組であり 管楽器(サックス、フルート、クラリネット)、キーボード、ドラム、 パーカッション、ボーカルのみで曲が構築されている。 ギターもベース(ピーター・シェラーのベースペダルで代用)も存在しない というのも非常に変わっている。
前衛性と構築性が微妙にミックスされ、一体どこからどこまでがアドリブで、 どこまでが計算、構築された部分なのか全くわからない。
ライブなどは行っていたのだろうか? こんな優れた作品が自主制作というのも恐ろしい話である。
ちなみにCD再発ではボーナストラックとして 20分を越える大作が追加されている。
天才ピーター・シェラーは、その後、 アート・リンゼイとアンビシャス・ラヴァーズを結成し成功を収める。 才能ある人はいつの時代でも何やらしてもすごいってことですね。


・SYMPHONIC PICTURES/SFF(76)

ザッパがプロデュースする予定もあったという、 スイスを代表するバンドSFFの1st。 シンセとメロトロンが主体となり作り上げられた 全編インストの独自の音世界は まるで精密機械のような印象を与える。
バンド名=メンバーの頭文字のトリオ編成ということで、 同時代に活躍したELPと比較すると地味だが、 SFFの方が理知的で音楽的に高度である。 (そういう意味では60年代後半のEGGとNICEの関係にも似ているかも...)
複雑な変拍子の使用法や曲の構築法は同国のISLANDに似ており、 非常に興味深い。(ISLANDよりは聴きやすいと思う。)
ちなみにツイン・メロトロン、 レスポールギター&リッケンバッカーベースの自作ダブルネックモデル (ゲディ・リーも真っ青?)など使用楽器もぶっ飛んでます!


・WELCOME/SAME(76)

スイスのハードなシンフォ・トリオによるデビュー盤。
最少人数でイエスに挑戦したような内容で、 人数不足を補うためか、各メンバーが派手に暴れてくれます。
特に1曲目のオープニングは迫力満点... 切れ味があり重量感もあるドラム、 ゴリゴリと押しまくるハードなベース、 荒々しくうなりをあげるオルガン&シンセの絡みは ひたすら格好良いです。(ヴォーカルが入るとトーンダウンするのが残念!)
3人の個性が明確に浮き出ているのはトリオ編成の醍醐味といえるでしょう。
このアルバムを聴くと、アルバムの面白さを堪能できると同時に、 イエスが極めて特別な個性の集合体であることを再認識させられます。


 オーストリア

・ABRAKADABRA/KLOCKWERK ORANGE(75)

オーストリアの秘宝的存在として知られる 哀愁たっぷりのシンフォ名盤。
ナイス、EL&P、エクセプションの影響を受け、 トランペットやオルガンをはじめとする 多彩な鍵盤群が躍動するクラシカルな作風で、 75年という時代を考えると古めかしさもありますが、 クラシックの本場だけあって荘厳で格調高い雰囲気に 包まれているのが最大の特徴と言えます。
作曲能力も極めて高く、細かい場面をうまくつなぎ合わせることで、 インストメインながら最後まで飽きることなく 聴き通すことができます。
ヨーロッパのクラシカル・シンフォが好きなら マストでしょう。


 ギリシャ

・AKRITAS/SAME(73)

ギリシャの3人組アクリタス(AKPITAΣ)によるコンセプト作。
うなりをあげるシンセ、躍動するピアノ、 バタバタと細かく叩きまくるドラム、粘着質のギター... と各パートだけを分解して聴くとラッテ・エ・ミエーレに驚くほど似ているのですが、 全メンバーが一体となって生み出されるサウンドはかなり異なったものになっています。
国民性の違いによるものなのでしょう、 イタリアっぽい泣きやクラシカルな部分は無く、 アフロディティス・チャイルドのようなギリシャ独特の宗教的かつ土着的な空気が アルバム全体を支配しています。
湯水の如く湧き出るアイデアの豊富さもさることながら、 そのアイデアを次から次へと詰め込み、 間髪入れず一気に聴かせてしまう構成力は特筆すべきでしょう。
混沌とした音世界は聴けば聴くほど凄みが増します。 個人的にはギリシャで最も有名な「666」をも凌ぐ名盤だと思っています。


・APOCALYPSIS/SAME(80)

数少ないギリシャのシンフォ名盤の中にあって、 メロディアス系の最右翼的作品であるアポカリプシスのデビュー盤。
クラシカルなアレンジや情熱的な演奏はイタリアのシンフォのようだったり、 人懐っこい温かみのあるメロディはオランダのシンフォのようだったり、 ユニークなアイデアはヴァーティゴ系のB級シンフォのようだったり、 時折シアトリカルになるヴォーカルはジェネシスのようだったり... ひっきりなしに場面展開を繰り広げながら、 コロコロと様々な表情をみせてくれるので大いに楽しめます。
演奏テクニックにしても楽曲の洗練度にしても1980年の作品とはとても思えない 古臭さが漂っていますが、この垢抜けないところが シンフォマニアの心を捉えて離さないのだと思います。


 ポーランド

・STWORZENIA SWIATA CZESC DRUGA/SKALDOWIE(76)

ポーランドを代表する偉大なロックバンドによる、 プログレとしての最高到達点となる大名盤。
前作KRYWAN, KRYWANも名盤ですが、この間の4年間の目まぐるしい 欧米音楽シーンの変化をもろに受け、 シンフォ、ジャズ・ロック色が濃くなっています。
急激に視野が広がり、サウンドが洗練され、同時代の欧米の名盤群と比べても 遜色のない感動作となっています。
この時点で、バンドを始動してから10年以上経過していることもあり、 各メンバーの息もピッタリと合っています。
欧米の影響を受けながらも、ポーランドらしさもちゃんと残しているのが素晴らしく、 アルバム全体が薄暗く悲しい空気に支配されており、 情感たっぷりに歌われるヴォーカルがまた泣けます。


・WELCOME/SBB(79)

ポーランドというより東欧を代表する超大物バンドSBBの最高傑作。
初期の作品は、テクニックは超一流ながら、曲が長すぎてメリハリがないなど、 構成や展開の面で未成熟な部分があった。 しかし作品を出すごとに成長・進化を遂げ 本作品では西欧のメジャーなバンドらと比べても遜色のない出来を誇っている。
全編にわたってシンセが多用(東欧のバンドはシンセの使い方が独特!) されているのだがそれが良い方向に作用している。 シンセのおかげで彩り豊かでポップになり、曲に表情がでてきており、 まるで白黒からカラーへ移ったようなイメージである。
メインとなるのはとにかくキーボードで延々と弾きまくっているが、 時折出てくるギターやアグレッシブなパートでのドラミングからも 相当レベルが高いことがわかる。
後半に以前のようなだれる部分が少々みられるものの、 前半の爆発力、ドラマティックな展開はシンフォ系の王道といえるサウンドです。 彼らはまだまだ現役で頑張っています。最近ライブも出ました。


 チェコ

・HUASCARAN/FERMATA(77)

チェコのジャズ・ロック・バンド、フェルマータの作品
70年代の東欧ということで、 当初、クラシカルな理論に基づいた曲を構築し、 楽譜通りに正確な演奏をしているようなクールなイメージを持ったが、 出てくる音は全く異なっており、 ソロ・アドリブの連続で全編テンションの高い 熱い演奏が繰り広げられている。
メンバーのテクニックも超一流であり、 なぜかファンキーなベース (まるでスタンリー・クラークのよう、黒人じゃないの?)、 音数が多く、延々とアドリブ弾きまくるギター (速弾きスタイルは、ジョン・マクラフリンそのもの) キーボードはシンセを多用しキース・エマーソンしているし、 ドラマーの手数の多さや歯切れの良さも痛快で 硬質な引き締まったバンドサウンドの屋台骨を担っている。
アルバムを通して、ギターが主導権を握っているせいか、 一番近いのはマハビシュヌ・オーケストラだが、 キーボードの活躍により、フィンチのような泣きっぽい プログレ色も残っている。
まだレコーディング技術が発達していないためか、 意図的なのかはわからないが、 エフェクトが加えられた形跡があまり無く原音そのもので、生々しくとても迫力がある。
ジャケットにライブの写真が使用されているが、 きっとライブは強烈だったことでしょう...
ボーナストラック3曲入り(これがまた格好良い!)で、 唯一の国内盤であり入手しやすい本作をお薦めしますが、 実はこの後の4th「DUNAJSKA LEGENDA」はもっと素晴らしい内容で、 彼らの最高傑作となっています。


・SVET HLEDACU/M.EFEKT(79)

チェコという過酷な環境の中で、60年代末から80年代初頭まで メンバーや音楽性を様々に変えながら活動を続けたスーパーバンドによる名盤。
時代によって音楽性が異なるものの、どのアルバムもクオリティが高く、 紹介するアルバムをどれにするか迷いましたが、 メンバーが豪華(ツイン・キーボード、そのうち1人はチェコの重要人物OLDRICH VESELY)な 本作を選ぶことにしました。
初期はジェスロ・タル風のブルース系ハードロック、 コロシアムにブラスを加えたようなジャズ・ロック (NOVA SYNTEZAシリーズは傑作)など様々な音楽性を追求していましたが、 中期SVITANIEあたりから一気に洗練度がアップ、 テクニカルシンフォ色を強め、 YESやUKに対する東欧からの回答ともとれるような本作を発表します。
スケールの大きい楽曲、味わい深いボーカル、哀愁漂うメロディ、東欧独特の深遠なシンセ、 手数の多いドラム、そしてなんといっても中心人物 RADIM HLADIKの天才的なギターワーク(才能はヤン・アッカーマンに匹敵するでしょう)... これらが渾然一体となった演奏は圧巻です。
この後トリオ編成による33(これまた本作と同傾向の名盤)を 残して解散してしまうのが大変残念です。
なお近年再発されたCDにはポップなボーナス曲(実は私はこっちのほうが好み(^^;)) がたくさん収録されていてとてもお得です。


 ルーマニア

・ZALMOXE/SFINX(78)

ルーマニアのシンフォ名盤として誰もが認める作品。
荒々しさや泥臭さを売りにするバンドが多いルーマニアの中にあって、 正統派シンフォ路線を貫いています。ある種異色の存在と言えます。
同時期にチェコのMODRY EFEKT(M.EFEKT)が洗練&ポップ化したサウンドを 彷彿とさせるところがあり、 欧米ロックの影響を感じさせるライトで垢ぬけた音作りがなされています。
のびやかに広がるシンセに、母国語の素朴なヴォーカルが マッチしています。


 クロアチア

・TIME/SAME(72)

旧ユーゴスラビア(現クロアチア)のスーパー・バンドによる プログレ〜ハード・ロックの名盤。
辺境らしさが感じられるのは、 魂のこもったパワフルな母国語ヴォーカル(もちろん最高) のみで、あとは、70年代ブリティッシュ・ハードの 名バンド(クォーターマス、 アトミック・ルースター、ウォーホース、メイ・ブリッツ...)を 彷彿とさせるような先鋭的で重厚な内容となっています。
ギター、オルガン、ドラム、ベース... 各演奏陣の力量はすこぶる高く、息もぴったり合っていて、 火花が飛び散るようなハード・ロック、 哀愁漂うオルガン・ロック、 泥臭い渋めのブルース・ロック... いずれのスタイルも見事にこなしています。
前述したブリティッシュ・ハードのマニアはもちろん、 イタリアのフレア(こっちも72年)あたりを好む方に 強くお勧めしたい一品です。


 ベラルーシ

・GUSLIAR/PESNIARY(80)

数少ない旧ソ連のシンフォ作品の中でも、 トップクラスに位置するベラルーシが誇る必聴名盤。
36分越えの一曲に、管弦楽や男女コーラスを導入した ヘヴィでクラシカルでドラマティックな 世界ががっつりと繰り広げられていきます。
辺境ものというと、必聴名曲1曲を除いた他の曲は退屈することも 多いのですが、本作は最初から最後まで濃密で隙が一切ありません。 (そもそも収録曲は1曲ですが(笑))
何故かコンチェルト・グロッソや受難劇を思わせるパートもあり、 辺境ロマンを大いに感じさせてくれる一品です。
リリースはちょうどモスクワ・オリンピックの年なので、 音楽でも打倒欧米を目指し気合を入れまくった結果、 このような怪作につながったのかもしれませんね。



戻る

inserted by FC2 system