ライブ・レビュー (2000)

2000年に見に行ったライブの感想です。



2000年に見に行ったライブ

2000.5.12 DREAM THEATER 渋谷公会堂
2000.10.15,16 KING CRIMSON 中野サンプラザ



・DREAM THEATER(2000.5.12 渋谷公会堂)

今回は、昨年のフラワーキングスと同じメンバーで見に行きました。 普段はライブの1週間前から、そのアーティストの曲しか聴かないようにしているのですが、 今回はGWに購入したトランスアトランティックの出来があまりに良くて、 ほとんど事前予習ができませんでした。(ドラマーは同じだけど) しかし偶然にもライブ前BGMにトランスアトランティックが使われていたそうです。 (会場到着が遅れたため私は気付かず。後で知りました。)
会場にぎりぎり到着し 最後部(2階最後部の右から2〜4番目、ブービーの位置!)の座席に座った途端、 時計(メトロノーム?)のSEが鳴り響き、超大作METROPOLIS PT.2が始まりました。
曲が進むにつれ最初は反応が悪かった客席も徐々に盛り上がっていきましたが、 ちょうどこの頃鬱気味だったこと、また座席が最後部だったこと、 事前予習があまり出来ていなかったことなどから気分があまり乗らないまま、 演奏が次々と進んでいきました。
演奏内容は確かにすごいのですが、 単にアルバムを再現しているだけ=アルバムを大音量で聴いているイメージで、 どこか気持ちが冷めたまま時間だけが過ぎていき、 気が付くと半分近く演奏が終わっていました。 ここまでで印象に残ったのは、SCENE FOUR:BEYOND THIS LIFEの頭で 「ウオー」という絶叫を入れたのが格好良かったことぐらいです。
ところが、...SCENE FIVE:THROUGH HER EYESの出だしで、 女性スキャットが入る部分でスキャットの代わりに、 ペトルーシのソロを導入、初めて大幅にアルバムと違う展開が出てきたのですが このソロが想像以上に素晴らしかった... ジョーダンの浮遊感のあるスローなバッキングの上を ボリューム奏法をはじめありとあらゆるテクニックで ときには優しくときには激しく弾きまくるペトルーシ... こんな心を揺さぶる感動的なソロを久しぶりに聴きました。 超絶かつ情感豊か...本当に泣きそうになりました。 で、この後は気が付いたらすっかり彼らの世界に溶け込んでいました。
ペトルーシはギターのエフェクトの切り替えタイミングがとてもスムーズで、 特にアコースティック/エレキ歪み系の音の切り替えは見事でした。 普通の楽曲なら何気ないことにも思われるが、 あれだけ複雑で音の切り替えが何度も生じる楽曲で当たり前のように 切り替える技術は相当難易度が高いと思う。 (もちろん演奏技術だけでも超高度だが...)
また、エレキギターでシミュレートしているアコースティック音は、 音だけではホンモノかどうか区別できないほど似ていました。 ちょっと前なら実際にギターを弾き分けていたはず。技術の進歩は素晴らしいです。
しかし、SCENE SIX:HOMEの後半部、超絶見せ場で ギターの音が突然出なくなったのはヒヤヒヤしました。 普通の楽曲であれば、その場で音が出るまで他の楽器でつないだり、 最初からやり直すなどいろんな対応策があるだろうが、 今回のようなコンセプトものの場合、そういう訳にはいかず 音が出ないままでも弾き続けるしかないので辛いものがあります。
会場内も嫌〜な空気が流れましたが、ちょうどある程度まで行ったところで、 ドラムソロにつながったので救われました (ギターをこの間に取り替えて、その後は無事に進行)... でもこのドラムソロ、ペトルーシの危機を救うために臨機応変に対応したのだとしたら マイクの大ファインプレイです!
マイクはあれだけのリズムを正確に叩くだけでも恐れ入るのですが、 ドラムレスの部分でも、コーラスになるとタオル肩に掛けてひょっこり出てきたり、 手拍子をするように客を煽ったり(コンセプトものは客を煽りづらいですね)と、 ドラム以外でも頑張っていて好感が持てました。
SCENE SEVEN:I.THE DANCE OF ETERNITYでは、中間部に ジョーダンの大胆なソロタイムが用意されていました。
様々な仕掛けを用意したジョーダンの超絶ソロ自体はとても面白くて、格好良かったけど、 ちょっと長かったし、いじり過ぎかなぁ...構築された大作の途中でやってることを考えると ずっとつながってきた流れを断ち切らない程度にしないと... (まあジョーダンの場合は、お披露目の意味合いも強いから良しとするか...、 前回、デレク在籍時の来日公演でもデレクが目立つような構成だったし。)
その後のミュングのベースソロは今回もやはりモゴモゴして聴こえ辛かった...(^^;) 本人はあれで満足しているのかな?
ラブリエは絶好調でした。情感たっぷりに丁寧に歌い上げており、 ハイトーン、シャウトにも声に艶がありました。 特にハイライトとなるSCENE EIGHT:THE SPIRIT CARRIES ON での歌はバックの演奏にやさしくとけ込んでいて スタジオ盤よりも数倍美しく再びうるうるきてしまいました。 (欲を言えば本物の女性スキャットが入っていれば... でも入っていたら確実に泣いていたかも(^_^;))
そしてラストのSCENE NINE:FINALLY FREEへ... この曲に限らず楽曲内には同じフレーズが何度も繰り返し出てきますが、 最初と最後では重みが全然違います。感情の入り具合が全然違い、 感動で体の震えが止まりませんでした。
演奏が終わった後、ステージ上にラストシーンが放映されましたが、 国内盤を買っていないためあらすじを知らない私には意味が分かりませんでした。 でも意味を知らない分、演奏、楽曲に集中できたので、これはこれで良かったと思っています。 映像が終わったあと、自然にいくら拍手してもしたり無いくらいに思えるほど、拍手を続けました。
アンコールでメンバーが再び出てくるまでの間、手拍子中に 気分を落ち着かせながら思ったのですが、 超絶パートの見せ場、速弾きは大きい会場だと音が回って不利ですね。 機械のように正確に弾いているんだろうけどそれが伝わりづらくもったいない感じがしました。
でも、その分、情感豊かなゆったりしたソロパートや、 歌メロ、歌、各楽器が表現する見せ場以外の部分 (普段アルバムを聴いていて目に(耳に)していなかった部分)がより際立ちました。 何度も出てくる基本的な歌メロディがこんなにも印象的で美しかったなんて... これは新しい発見でした。
アンコールは一体どこまでやるの?といった感じで、 あまりになじみの曲がどんどん出てくるので、笑ってしまいました。
PERUVIAN SKIESのあと、メドレーでEROTOMANIA、PARADIGM SHIFT(リキッドテンション!) PULL ME UNDER、UNDER A GLASS MOON(UNDERつながり?)、A FORTUNE IN LIES、 ONLY A MATTER OF TIME、TAKE THE TIME(TIMEつながり?)... まさに出血大サービス(出血多量で死んじまうぞ!)。 今後、他のバンドにもこれぐらい要求したくなっちゃうじゃないか!
さすがにこのときは、先程とは違い今までの彼らの雰囲気に戻っていました。 もちろんこんな彼らも大好きです。
今回のメンバーはどう考えてもドリームシアター史上最強のラインナップでしょう。
以前はギター−ベース−ドラムのオリジナルメンバー組以外のメンバーは どこか浮いている、雇われ的なイメージも少しあったけど、今は違います。 チームワークも最高でしょうね。
あれだけの複雑な楽曲を演奏するわけだから当然でしょうけど、 コンセプトものを作り上げた副次的な効果ともいえるでしょう! デレク時代に比べて、バンドが一皮剥けた感じです。
しかし今後彼らはどうなるんでしょう。 これだけ完璧なコンセプトアルバムを作り上げた後の方向性は難しそうですが、 プログレメタルの先駆者(1stの衝撃からもう10年経つんですね...月日の経つのは早い!) として常に走り続けて欲しいです。
最後部で最初は不満だったけど、今考えてみればギリギリでもチケットを押さえられて 非常にラッキーだったと思います!


・KING CRIMSON(2000.10.15,16 中野サンプラザ)

私がプログレッシブ・ロックに開眼した(人生を踏み外した?)きっかけであり、 同い年(しかもブリューとは誕生日が一緒)でもある愛しのキング・クリムゾン! 今世紀最後の日本公演を2夜連続で見に行ってきました。
まず10/15、席に座ってまず驚いたのが周りに女性が多かったこと! 私の周囲を見回すと八方のうちなんと4人が女性でした。 さすがはクリムゾン、とかく男社会なプログレ界にあっても 超メジャー級、別格なだけあるなぁ〜と、妙なところに1人で感心していると、 メンバー4人が登場、おもむろに前に出てきて、手を合わせて、 まるで体育会系なノリで気合いを入れ出したので、笑ってしまいました。 人数も少なくなり各人の負担が重くなったにも関わらず、楽曲はより複雑化しているので、 「みんなで頑張って息をあわせて素晴らしい演奏をしよう!」 ということなんでしょう。きっと!
ステージ上ですが、前回のダブルトリオでの来日公演(当然見に行きました)と 比べると、地味な印象はどうしても拭えません。 オープニング・アクトがいないのと、役者2人がいないのは大きいですね。
1曲目はVROOOM...90年代クリムゾンの復活のノロシをあげたこの曲は格別なものがあります。 2曲目は、曲名を聞くと竹本孝之を連想してしまう(わかる人はわかる?)THELA HUN GINJEET!、 ブリューの細かいカッティングは相変わらずキレてます。 そしてFRAME BY FRAME、2人のギターが見事に重なったり分離したり... 80年代の曲の中で、今のクリムゾンに一番近いイメージの曲に感じました。
...と、この辺までは良かったのですが、実はこの日は体調が悪く絶不調だったこと、 隣席で一緒に見るはずだった友人が急用で最後まで来なかったこと、 席が後ろでメンバーが何をやっているかが分かりにくかったこと、 などから気分が高揚しないままどんどん曲が進んでいきました。 特に体調が悪かったのはまずかったです。 私の苦手なPROJEKCT名義と思われる即興ものは何度かカクンカクンしてしまいました。 (フリップ師匠すみません!)
そして気付いたら照明が「赤」に変わってレッド、ここで少しまた気分が盛り上がって来たのですが、 演奏終了とともにメンバーが下がってしまいアンコールへ。 アンコールもあっという間に進んでいき、 ラストは一部で話題になっていた、DAVID BOWIEの"HEROES"! なんとカバーで終わりです。 (クリムゾンのカバーなんて、GET THY BEARINGSとかMARS以来じゃないの!?(30年振り?)) 意表を突いていたので、観客の一部は盛り上がり、一部は戸惑う、 といったなんとも不思議な反応のままライブは終了しました。
そして雪辱を期した16日、この日はなんと前から5列目。ほとんどかぶりつき状態です。
1曲目はいきなり太陽と戦慄パート4、のっけから飛ばしてくれます。 ギター2人の役割分担がはっきりと見れて面白かったです。 リード?が交互にチェンジしてたんですね。 難解なシーケンスフレーズをもくもくと機械のように弾きこなすフリップ、 ギターで表現しうる限界に挑もうかとでもいうべきトリッキーなプレイを連発するブリュー、 特にブリューのそれは続くCODA:I HAVE A DREAMで目立っていました。 いやはや、スティーブ・ヴァイもびっくりのトリッキーさはライブ映えします。 見ていて飽きません。 しかしあんな複雑な演奏をしながらも、歌えて、魅せることのできるブリューはすごい。 フリップの寡黙で整然としたスタイルとの対比も面白いです。名コンビですね。
次はPROZAKC BLUES... あれ、ブリューは風邪引いて喉の調子最悪なんじゃなかったっけ? (前日も若干苦しそうな場面があった) こんな曲歌って大丈夫なのかな?と不安になりました。 この曲の野太い声は、いかにも喉に過度の負担がかかりそうです。
そして早くも新作でのパート4と並ぶ切り札、フラクチャードへ... パート4もそうでしたが、この曲もギタリスト2人の役割分担が判明してうれしくなりました。 完璧な演奏力に圧倒されましたが、 中間部でフリップの音がフェードイン/アウトするところだけは、 ボリュームコントロールに妙な違和感がありました。 (なかなかボリュームがあがらないかと思ったら、急に大きくなったり!、 これは2日ともそうでした) でも、このボリュームがあがる前に生のピッキング音が聴けたのは感激。なんとも贅沢です。
その後は、DINOSAUR、ONE TIME、SEX SLEEP EAT DRINK DREAMなど、 昨夜演奏されなかった THRAK(90年代ダブルトリオ時代)の歌ものが次々と演奏されました。 最後だからブリューの喉がある程度つぶれようと全開で行こう!ってことなんでしょうか?
特に、DINOSAURは途中音が出なくなるハプニングもありましたが良かったです。 クリムゾンの中では一風変わった新境地ともいえる曲ですが (ポップだけどやっぱりクリムゾンという感じ)、 個人的にかなり気に入ってる曲なので演奏されてうれしかったです。 SEX SLEEP EAT DRINK DREAMの中間部の暴走部分も格好良かったです。
クリムゾンといえばとかく超絶インストや即興というイメージがありますが、 この日は違う一面を垣間見たような気がします。 (あくまでもボーカルがメインで、バックの演奏はでしゃばらず、 ボーカルの前に出ることがない。) これらの楽曲は役者2人(ブラフォード、レヴィン)が減ったので、 おかずが少なくなって淋しく感じた部分もありましたが、 メロディが明確ですっきりしており、バンドとしてのグルーブ感がありました。 特にパットのドラミングはブラフォードに比べて分かり易く、 根底にロックが感じられるました。 (アラン・ホワイト加入後のYESと状況が似てるかもしれないです。) これはこれで良かったのではないでしょうか?
..と、ここまで来て気付いたのですが、曲順や選曲が前日とかなり変わってました。 次にどの曲が演奏されるのか予測できないのでなかなかワクワクします。 連日見る人のことを考えてくれてるんでしょうか? それともメンバーが毎日同じことやっているとつまんないから? いずれにせよファンにとっては嬉しい限りです。
そして、レッドへ...やはりこの曲に対する観客の盛り上がりはすごい! みんな70年代クリムゾンが大好きなんだなあと改めて実感。 しかし、この曲は最新のクリムゾンナンバーが延々と続いた後だったせいで やたら単純な曲にきこえました。(悪いと言ってるのでは無いです!) 楽曲がどんどん複雑化(進化?)してるってことですね。時代の流れを感じてしまいました。 (普通のバンドはどんどんポップ化、簡素化していくものなのに、クリムゾンらしいです。)
結局2日間を通して、70年代クリムゾンの曲はこのRED1曲だけでした。 精神異常者とはいわないまでもパート2あたりはやって欲しかったなぁ... いつまでも後ろ向きのままでもしょうがないんですが、70年代クリムゾンに格別な思い入れが... こう思うファンは私だけではないはずです。(良い悪いは別として)
新作はフラクチャードとパート4だけだと思っていましたが、 続くTHE CONSTRUKCTION OF LIGHTによって、 他にも素晴らしい楽曲が存在していることを改めて思い知らされました。 ギター2本が奏でるシーケンスフレーズの掛け合いやリズムずれが、 うねりと浮遊感を感じさせる独特な音場を作りだしており、 非常に効果的でライブ向きだと思いました。(FRAME BY FRAMEも同様) パットのドラムはこの曲が一番アグレッシブに聴こえました。 (やはり自分が一から参加した曲の方が暴れやすいんでしょうね。)
アンコールはブリューが1人でにこやかに登場し、 アコギ弾き語りでTHREE OF A PERFECT PAIRを演奏、 この曲での表現力は本当に素晴らしかった。とてもギター1本とは思えなかったです。
複雑なフレーズなのに、ごまかしの効かないアコギなのに、 一音一音が非常にきれいに出ていました。 またそれをにこやかに歌いながら、いとも簡単にやってしまうのだから恐ろしい! ブリューのすごさを再確認しました。 こういうことはフリップには絶対出来ないでしょう。 (フリップはもともと歌わないけど、演奏だけだとしてもこの手のノリは出せないでしょう。) ブリューの歌も一番良かったです。
続いては、メンバーが再登場しエレファント・トーク! 出だしのベース音がしっくりこなくて、 この曲はレヴィンの方がやっぱり良いかな?と思ってしまいました。 象さんのパオーン!フレーズもあまりきれいに出なかったけど、 この曲もやっぱり盛り上がります。
そしてこの日も"HEROES"で終了。フリップがにこやかに拍手をしていたのが印象的でした。 と、ここでやっと観客が立ち始めました。 メンバーも帰るぞというときになってちょっと遅いんじゃないかい? なにはともあれ、これにて11回も行われた今回の来日公演は全て終了。 長い間、本当にお疲れ様でした。
いやー、この日は何もかもが素晴らしかったです。 家に帰っても興奮さめやらず、深夜にレッド弾いてました!
ライブってもんは近くで見ないとダメですね。 こんなにも前日と印象が変わるとは思いませんでした。 苦手な即興ものでも、メンバーが何をやっているのかが見え、 緊張感が伝わり退屈しなかったのは大きかったです。
でも、メンバーには後ろの観客にも楽しめるようもうちょっと工夫して欲しいとも思います。 観客へのアピールという点ではブリュー1人だけが孤軍奮闘している状態なので... フリップは動かないのが芸風!だから良いとして、 ガン、マステロットは裏方に徹しすぎ(特にガン!)。 もうちょっとアピールして目立って欲しかったです。 (サポートメンバーじゃないんだから...)
ブリューは「またすぐ来る!」と言ってましたが、次回はどんなクリムゾンになってるんでしょう? いずれにせよ次回来日時も絶対に見に行こうと思います。 もちろんなるべく前の席でね!(^^;)



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